さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

408 / 1416

親友になる前の【戦う者】と【栄光を往く者】の話。



油断していて

『憧れ』では、超えられないと言ったのはさて誰だったろう。

もはや忘れた、もしくは言われなれたからか。

 

"偉大なる背を追い"、やって来たような場所。

生まれた場所では上手く噛み合わない才覚を、満遍なく使い果たすためにやって来た場所。

 

自分でいうのも何だが、自分には『才能』がある。

でなければこんな場所に来ていない。

けれど。

 

「────」

 

そこで、後を追うこと(至上命題)に比類するモノを得てしまった。

後ろなぞ振り返らない、偉大なる背を追わなければならないのに、己が名をその相手に呼ばれてしまえば最後縫い付けられたかのように脚を止めてしまう。

 

狂気的なまでに逃げ切りたい。

しかし、それでも後ろからキミが追ってくるものだから。

自分が求める偉大なる背など知らぬ、とでもいうように、ただただ恐ろしいまでに追い求めてくるものだから。

そんなことをされてしまえば、もう()()()しかないではないか。

ああ、本当に困った人だ。

いつだって自分のペースを崩してくる。

そして自分はそれに抗う術を持たず…。

 

 

あの日、キミにはじめて出会って。

息も絶え絶えながら、それでもしっかと、『勝った』と示すその握り拳に、眼に、見惚れたのが俗にいう"はじまり"だったのだろう。

それまではそれっぽく振舞っては期待と賞賛を浴びていた己に火を灯してくれた唯一。

まさしくあの日の己は、産まれたばかりの雛鳥であった。

 

「…、」

 

薄く開かれた目から覗く双眸は、まだ夢現といった様子で虚空を見つめている。

未だ覚醒しきってい(こちらを見)ない意識の中で、何を視ているのやら。

自分がこうなったのはお前(キミ)のせいなのに、と誹る声が止まない。

だから。

だから、追う。

こっちを見てもらえるように。

追い抜いて、その視線の中に入るように。

その視線(世界)に、介在したい。

そうして初めて、ようやく己という存在を認めてもらえるスタートラインに立てる。

故に、今日もまた。

 

「今日もよろしく」

 

差し出した手はゆっくりと握られ。

控えめながら、その目がたしかに己を見る。

"はじまり"のあの日よりは幾分かマシになった触れ合いは、やはりまだまだぎこちなくて。

それを微笑ましく思いながらも、どこか残念にも思ってしまうあたり、自分も大概である。

 

(まぁ…うん)

 

焦らずとも時間はまだ。

急いては事を仕損じる、ともいうらしいから。

もう少し。

 

(ゆっくり、ゆっくり詰め寄ってあげる)

 

それまでは、ただの雛鳥だと────。





まだ"偉大なる背"を追うという至上命題が心の内にある【戦う者】とそんな【戦う者】に火を灯され雛鳥のような、もしくは何か爆誕させてはいけないものを爆誕させてしまった【栄光を往く者】、ふたりの若き日の独白。
でこの後、追って追われてして自他ともに認める仲良ぴっぴ()になるんだよね!
それを考えると少なからず例のアレに脳焼きされてる【戦う者】に『自分を見ろ!』を成功させた【栄光を往く者】ってスゲェな…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。