さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

41 / 1416
同じ場所にとどまるためには、絶えず全力で走っていなければならない。


次の舞台へ

シルバーバレットは凱旋門賞を余裕で制した。

あれほどの速さで突っ切り、道中彼に競り合っていた馬はバテバテになっていたのに彼自身は少々息が上がったようにしか見えなくて。

 

ジャパンカップの時にも劣らない爆発のような歓喜の声に心臓が強く鼓動を打ち始める。

 

「…本当に、夢みたいだ」

「フヒンっ!」

 

茫然と、そんなことを呟くとべろりと頬を舐められる。

ベロッベロッと舐められ、そこからぐりぐりと擦り寄られ、くすぐったさと嬉しさで思わず笑ってしまう。

 

「やっぱりお前は最高だよ、バレット」

「ヒヒンっ!!」

 

 

わ〜い、勝った勝った〜!

どうも、僕です。

異国の地で変わらず連勝中だよ。

 

いや〜、今回はちょっとキツかったね。

斤量、だっけ?

それがいつもより重くて、はじめは上手く走れなかったんだよね。

 

でも、競り合ってくる相手がいてくれたから楽しい!ってなって良い感じのテンションになれたから僥倖だった。

その相手が途中で下がっていってしまったのはな〜。

まぁその頃になったら体が温まって、徐々に進出していったのだけど。

 

競り合ってくれた相手がいなくなったらもう僕だけになって、第4コーナーで騎手くんがムチを打ったところで体勢を変えた。

ジャパンカップの時とは違い、騎手くんの方も身構えてくれたので遠慮なくぶっ飛ばした。

 

後ろからは誰も来ない。

誰の気配も感じない。

僕だけであったのならその事実を怖がるだろう。

でも、僕には騎手くんがついている。

だから何も怖くはない。

 

風を、空気を切り裂いて、僕たちはゴール板を駆け抜けた。

 

 

シルバーバレットが凱旋門賞を勝った。

これで帰国かと思ったのだが、次のレースとして示されたのはアメリカ・チャーチルダウンズ競馬場で行われるダート10ハロン、ブリーダーズカップクラシック。

アメリカ競馬のダート中距離路線の1年を締めくくる最高峰の競走であり、その年のアメリカのダート最強馬決定戦となる競走だ。

 

シルバーバレットは芝とダートの双方を走ることができる競走馬である。

芝の最高峰レースとも呼べるキングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス、ムーラン・ド・ロンシャン賞、凱旋門賞を制し、芝の世界最強となったのだから、…ダートの世界最強も獲りにいこうではないかと。

 

「芝とダート、双方を制してこそ最強、か…」

 

行けるから取っておこうというような気軽さではあるが、それもシルバーバレットが勝つと信じられているがゆえにできることだ。

 

「もう少し、頑張れるかい?」

「ブルっ!」

 




僕:芝の世界で最強になったからダートでも最強になろうぜ!状態。
まさか二刀流とは思わんよな…。
アメリカさんも流石に来ないだろ…と思ってたら「行くよ?」されて可哀想。
どこまでも世界を蹂躙するウッマなのだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。