さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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そして、───魅せられるのだ。



"色"

「お前の目ってさ」

「はい?」

「そんな色、だったっけ?」

 

問いに問われた側のウマはこてりと首を傾げる。

何を変なことを言っているのかという顔で、

 

「……? えぇと、何の話ですか?」

 

()()()の目を、ぱちりと瞬かせた。

 

 

他人の目の色など、そうまじまじと見るものではないだろうが。

それでもふとした拍子に見てしまうことくらいはあるはずだ。

例えばそれは話している時であったり、あるいは写真や映像の記録を眺める時であったり。

そしてその時、そこに映った相手の目の色は果たしてどんなものだっただろうか。

 

思い出せるかと言われれば難しい話だが、しかし記憶にぼんやりと残っているはずのそれが、いま目の前にいるこのウマの瞳の色とは一致しないのだ。

そのことに違和感を覚えているのかいないのか──まぁ、気にしていないだけかもしれないけれど。

ともあれ、そんな疑問を投げかけられた当人はと言えば、

 

「あー……すみません、ちょっとよくわからないです」

 

申し訳なさそうな表情を浮かべながら小さく頭を下げていた。

ううん、どうしたものかコレは。

 

「いやまぁ、別に謝らなくてもいいんだが……」

「でも最近よく言われるんですよね、ソレ。俺だけじゃなく可愛がってる後輩もなんか同じこと聞かれてるみたいだし」

 

…ん?

 

「なんだそりゃ。流行りとかそういう類か?」

「いや、流行る流行らないとかじゃないと思いますけど……」

 

 

目を開く。

そして、鏡に写す。

そこに映る色は──()()

 

「……」

 

本当は、分かっている。

この色が本来の自分の目の色ではないことも、この色に何故()()()()のかも。

ただそれを言葉にしてしまえば何かが崩れてしまいそうで。

だから俺は今日もこの色の理由を知らないままだ。

 

けれど。

もし、ひとつキッカケがあるとするのなら。

 

───【領域(ゾーン)】。

 

時代を作るウマが至る…だとか、限界の先の先…だとか謳われる超集中状態。

レースにおいて極限まで『勝利』という一点に思考が研ぎ澄まされることで得られる境地。

それに至った瞬間から世界が変わるのだという。

まるで時間の流れが変わったかのように全てがゆっくりと動き始め、周囲の景色すらもその速度を落としていくような感覚の中で己だけが加速していく。

そんな、感覚。

 

その中で、

 

し ゅ る り

 

()()()()

何が、とは言い難いが変わったのだ。

自分の中に『ナニカ』が入り込み、馴染んで…。

その結果が。

 

【銀灰色の、目をした怪物】





目の色:
とある共通項を持ったウマが『領域』に入ることによって会得する色。
その色は、とてもとても美しい…銀灰色をしているという。
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