どこにも、行かないで。
何気なく気になって買ったゲームを友人を背もたれに遊んでいると、主人公だと思っていた人物が実は違って、本当の主人公はその一番初めに操作していたキャラクター(なお行方不明になった)を探すために誰もが寝静まった夜のセカイに飛び出した、という展開に…。
「ね、」
「なぁに?」
「もし、僕が消えたらさ…っうぉ?」
「まさか」
「…ミスター?」
「アタシが、そんなこと、許すと思う?」
「もし、だよ」
「もし、でもだよ。…そうだね、そうなるっていうのなら」
───キミの目が、そんなところに向く前に…閉じ込めるかなぁ?
「…」
もはやコントローラーを動かすべきか、入っちゃいけないセカイに入ってしまった友人を現実に引きずり戻すべきか。
ブツブツと、あまり聞いてはいけない類のことをつぶやき始めた様子に僕の目が徐々に死んでいく。
…仕方ない。
「ミスター」
「なに?」
「ゲーム、飽きた。…ぎゅ〜」
「……仕方ないなぁ!」
*
いつだって、霞のような存在だった。
その手を掴んでも、熱にも、質量にも、確証なぞなくて。
ただただ、虚しさと焦燥感だけが募っていく。
(どこにも行かないで)
自分よりもずっとずっと、華奢な体は力いっぱい握るだけで壊れてしまいそうで。
…いっそ壊して、誰も見向きしないぐらいにできてしまえば、どれほど良いだろう?
(お願いだから、アタシを置いていかないでよ)
いつものように、ソファに座っている姿を見つけて後ろから抱きつくように座れば、特に抵抗もなく受け入れてくれる。
ふわっと香ってくる匂いに思わず鼻を埋めてしまえば、子どもにするようなやわらかさで頭を撫でられ。
「どうしたの?ミスター」
…きっと。
キミは、求められさえすれば同じことを誰にでもするのだろう。
それが決して綺麗な感情からではないものも、同じように受け入れるのだろう。
……それは、とても嫌なのだけど。
「ん〜……なんでもないよ」
「そう?何かあったら言ってね」
「うん。ありがとう」
「…どういたしまして。あ、今日のご飯なににする?」
大切なものには名前を書いて。
または小さく、綺麗な箱に押し込めておくように。
自分だけが見ることのできる、そんなキミになってくれればどれだけいいかなんて思いながら。
今日もまた、アタシは笑みを浮かべ続けるのだ。
・
・
・
『籠の鳥』って、あるよね。
それに、『愛しているのなら、その対象を離してあげなさい』とも。
本当に、『鳥』が愛してくれているのなら、もとの場所に帰ってくる…ってね。
え、僕?
「…さぁ?」
Mr.CB:
ミスターシービー。
すごくおもい。
ナチュラルに引っ付いてそう。
それはそれとして自由人らしく、またお気楽に過ごしている風に見えて、知らぬ間にもう逃げられないところまで追い詰めてきそうな感じがある。
でも、相手が相手だからなぁ…。