さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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それは怪物か、それとも英雄か。

【追記】
誤字報告ありがとうございます。


██に捧ぐ挽歌

ブリーダーズカップ・クラシックとは、1984年に創設された比較的新しい競走だ。

また、アメリカ合衆国競馬の祭典であるブリーダーズカップ・ワールド・サラブレッド・チャンピオンシップの中の一競走であり、世界の競馬主要国の中でダート競馬をメインとしているのはアメリカのみであるため、実質この競走が世界のダートチャンピオン決定戦となる。

 

そんな競走に日本馬として初めて挑戦するのがシルバーバレットだ。

今現在の中央競馬は芝レースが基本で、シルバーバレット以前に芝とダートの二刀流ができた馬なんてタケシバオーぐらいしかいなかったのではないだろうか。

 

シルバーバレットは芝でもダートでも遜色なく走ることができる珍しいタイプの競走馬だ。

そういうわけでアメリカのダートの偵察がてら、ブリーダーズカップ・クラシックに乗り込んでみようかということになったのである。

 

 

「凱旋門賞の時より軽くてよかったな」

 

ブリーダーズカップ・クラシックにてシルバーバレットが負う負担重量は約57kg。

凱旋門賞の時は59kgであったため、それよりはマシだろう。

 

出走馬は彼を合わせて12頭。

そして、いつもの通りシルバーバレットが出走馬の中で一番年上である。

人気は4番目らしい。

 

「まぁ、他の国からやって来た奴に負けたら面目丸潰れだしなぁ…」

 

いくら芝であんなレコードだしても、ダートではそうもいくまいといった感じだろうか。

そんなことを思いながら、大変機嫌のいいシルバーバレットと共にレースへと向かうのだった。

 

 

どうも、僕です。

また違う場所に来たよ。

ダートを走るのか〜と思いながら、周りからバシバシ向けられる熱い視線に内心ニッコリとする。

 

いいねいいね。

気概のある奴が多くいた方が楽しいもの。

凱旋門賞の時は、競り合ってくれた子がいたけれど今回はどうなるかなぁ?

 

 

やっぱりコイツだけ飛び出す速さが桁違いだなと苦笑しつつレースが始まった。

最初からトップスピード。

もしもシルバーバレットが負けるとしたら、スタートを捕られた時だと僕は思う。

まぁ、未来永劫そんな馬は現れないだろうが。

 

悠々と、一頭だけ違う次元でレースが進んでいく。

ギュンギュンと突き進み、後ろなんか関係ないとでもいうようにレースは終わった。

 

キッカリ2:00.0というタイム。

2着馬を3秒近く突き放した快勝だった。

 

「これで、日本に大手を振って帰れるな、バレット」

「フヒンっ!」

 

数えきれないほど、日本競馬の夢を勝ち獲って。

バレットが引退すれば種牡馬になるだろうと、そうなるのなら自分も引退して彼の子どもの面倒を見ようと、…そう、新しい夢を見ていたのに、

 

「え……?」

 

シルバーバレットは、帰ってこなかった。




どこまでも、誰よりも、速く駆け抜けて─────帰らない。


次回、エピローグ。
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