さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ずっとずっと、瞼の裏に。



まがい物の夢

声をかけられた。

初対面であるというのに、ひどく切羽詰まった声だった。

熱烈に、痛いほどに手を掴まれ。

今にも大粒の涙が零れ落ちそうな瞳で真っ直ぐに。

その目を見て、僕は何となく「漫画の主人公みたいなヤツだなぁ」と、どこか現実逃避じみたことを考えては「痛いから力をゆるめてくれ」と言ったのだった。

 

 

声をかけてきた件の相手-カツラギエースは思った以上にマメなウマであった。

真面目というか、何と言うか。

いや、どっちかというとひとりでいる者を放っておけない気質か。

僕のことも、他の皆と同じように気にかけてくれている感じか?

いや、まぁ、僕の場合はちょっと事情が違うらしいけれど。

ともあれ、そんなわけで僕はカツラギと共に行動することが多くなったのだ。

そこにはカツラギを傍に置いておけば応対が楽だからという打算もあるにはあるが…。

 

「うん、シルバーは話すの苦手だもんな!」

 

本人も、こう言って利用することを快諾してくれたし問題ない…のか?

 

 

夢を見た。

 

『やぁ、こんにちは』

 

気楽な声で、気楽な言葉で。

そういう情景にそれまで一度もなったことがない癖に、夢というのは己が願望を叶えるのか。

 

『何処にでもいる、死人だよ』

「お前みたいなヤツがそう何処にでもいてたまるか」

 

くだらない話だ。

ありふれもしないし、面白みもない。

そもそも思い描くその姿も、自分の考える理想でしかない。

何故なら自分は、自分の前でにこやかに微笑む相手の顔を…そう、よく見たことがなかったのだから。

 

『キミが僕のことを望んだから…出てきちゃった』

「望んだ覚えはないぞ」

『えぇ~?』

 

不満げに口を尖らせる姿には、子どもっぽい印象を受ける。

だが、それも見た目だけだ。

 

「…本当のお前を誰も知らないんだから」

『あー、確かにそうだね!』

 

納得したように手を打つ仕草もまた子どものようだ。

しかし、次の瞬間にはまた違う表情を見せる。

 

『それじゃあさ! これから知っていこうよ!!』

 

嬉々として語る様は無邪気にすら見えるだろう。

無垢で、真っ白で。

でも。

 

「"これから"つっても、もう終わったろ」

 

キツく言うと、キョトンとした顔。

そしてすぐに理解して悲しげになる。

コロコロ変わるそれは見ている分には面白いかもしれないが、それだけだ。

 

『……そっか、やっぱりダメなんだね』

「当たり前だ」

『仕方ないかぁ』

「ああ、諦めろ」

 

紛い物の偶像。

その夢。

また後悔の具現とも、呼べるのだろう。

結局、コイツは何なのかと言えば──。

 

『じゃあ、またね!』





【世界制覇の大エース】:
カツラギエース。
後悔がありすぎる。
なので初対面から相手に自分のことを印象付け、相手の利になるように振舞っては隣を手に入れた。
漫画の主人公っぽい性格と思われがちだけど考えることは考えてるし、真顔になったらフツーに怖い。
というか大概の顔良い奴は真顔になったら怖いってそれ一番言われてるから。
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