さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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子どもに純粋に慕われてると思ってた大人が押せ押せされて焦るのはいい文明…。



ひとえに自業自得ですが

「…う〜ん、そうだなぁ。先生より強くなって、先生に勝てるようになったら考えてあげても…いいかな?」

 

ちびっ子たちの育成クラブを運営し始めて、存外自分が子どもに慕われやすいのだと気がついたのは1期生である子たちがトレセン学園に無事入学した時。

こんなド田舎から上京していく際に何やかんやと告げられた言葉に返したのが上記の台詞で。

……今思えばもう少しマシなこと言えなかったのかと思うけど、あの時の僕は本当にそう思っていたのだ。

そんな僕の言葉を聞いて、あの子たちは皆一様に目を輝かせていたっけ?

 

『よーし!ぜってぇ強くなるぞ!』

『うん!先生より強くなる!!』

「うん、頑張ってね。応援してるよ」

 

先程も述べたとおり、僕が育成クラブを興した土地はド田舎だ。

そしてレースというものは厳しい世界で夢破れる者の方が圧倒的に多い。

…ので応援しつつも、どことなく安心というか楽観視していた節があったのだが……。

 

「はえ〜…」

 

フツーにテレビで放映されるくらいのレースに出てる!

それも勝ってるし!!

それでインタビューで僕のこと話してるし!

名前は出てないからいいけど!!

 

「ま〜、そうなりますよね〜!」

 

このド田舎で育成クラブしてるの僕ぐらいしかいないしねぇ!

 

『せんせー!』

「はいはい、すぐ行くから待ってて」

 

 

先生は、とても強い。

指導だって的確だし、ひとりひとり丁寧に見てくれる。

おうちに帰りたくないと言えばお泊まりだってさせてくれるし、美味しいご飯を作ってくれる。

自分だけじゃなくてみんなそう思ってるはずだ。

でも……。

 

「ごめんね、今日はこれで終わりです」

 

いつものように練習が終わったあと、先生は申し訳なさそうに言う。

自分たちにはその理由がわかっているけれど、それでもやっぱり残念だ。

「ほら帰った帰った」と背を押されながら、むかし先生が誂えたという簡易レース場に佇む人々を見る。

かつて自分たちと同じく、この育成クラブで学んでいたというその人たちは画面越しで見るよりずっと大きく見えた。

いつか自分も、あの人たちと同じようにあそこに立つんだ。

そう思うだけで胸がドキドキする。

ワクワクしてくる。

だから……。

 

「また明日ね」

 

優しく頭を撫でられれば、どんなに不満があっても笑顔になってしまうのだ。

 

「はい!!」

 

先生は、とても強い人。

けれども自分たちが向ける感情に何よりも疎く、またその感情を()()()()()()人だから。

 

「ひとりだけじゃあ勝てなくても、物量で攻めたら…いけるかな?」





僕:
シルバーバレット。
故郷で育成クラブをしている。
面倒を見た子たちにとても慕われており、「子どもの言うことだし」+自身の実力に関しての疑いようのない自尊心(プライド)から無理難題を無自覚に叩きつけているが…?
可愛がっていた子たちに押せ押せされてバカ焦りするの…いいよね。
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