さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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誰にも渡さない"獲物"



【怪鳥】が欲しがるもの

「やっと会えましたネ!」

 

そう言って俺をキツく抱き竦めた影は、どうやら俺のことを憎からず思ってくれているらしい。…初対面だが。

 

 

ソイツ-"エルコンドルパサー"は何かと俺の世話を焼いた。

教科書を忘れた時とか、果ては自分の時間を削って併走の相手など。

そんなに俺が気になるのだろうか?

俺はお前のことなんてトレセン学園に入ってからしか知らないのに。

……いやまぁ、確かにあの走りっぷりには感心したが…。

でもそれだけでここまでするだろうか?

まるで俺が()()な存在だと言わんばかりに振る舞う姿に周りは萎縮しており。

 

「チャンプは、エルだけを見ていればいいんデスよ〜」

「…」

 

それが至極当然だと、笑うのだ。

隣にいるのが当たり前。

食事だって気づけば隣同士だったり対面で食うようになってたし、ナチュラルに一緒にサボりするような仲になってしまった。

いや、ホントにビビったからな?

人通りのない空き教室で一眠りしようとしたら横にいるんだから。

 

「お前、俺以外にも仲いいヤツいるだろ」

「でも、…チャンプが一番なんデス」

「……」

 

 

「…あの子が、エルちゃんの"探してた人"?」

 

その人物は、ある意味で有名だった。

それほどまでに入学当初のエルコンドルパサーの荒れようは凄まじかったから。

 

『なんで…なんでいないんだ!!』

 

マスクで隠されていない()()()、そう悲痛に、または荒々しく吼えた姿を覚えている。

そしてある日を境にピタリとその嘆きは鳴りを潜め、いつの間にか姿を消していた。

それはまるで最初からいなかったかのように。

そして。

 

「チャンプ〜!!」

 

現れた。

エルコンドルパサーに抱き竦められるその子はひどく困惑した顔をしていて。

それでも拒絶せずに受け入れる様子を見て、ふたりは知り合いなのか、それとも別の理由があるのかと考えたところで思考を中断させられた。

 

「今度こそ…僕だけを見てね?」

 

ゾッとするまでに、知らしめの声音が。

囁きではあれど、一瞬で静寂に持っていったそれに身体中が粟立つような感覚に襲われながら、誰もがただ、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。

 

───────

─────

───

 

やっと、やっと見つけたんだ。

ずっと探していたキミ。

ぶっきらぼうに見えて、でもやさしくて。

僕が救えなかったキミ。

勝手に、身勝手に『約束』を破った嘘つき。

だから今度は間違えない。

もう二度と離さない。

誰にも渡したりしない。

例え相手が誰であろうとも。

 

「ね、チャンプ…?」





【怪鳥】:
エルコンドルパサー。
魂に焼き付いてしまっている御方。
なのでえげつないくらいにバリバリ執着してはニコイチしている。
…まぁそれには某旅程さんがいないからってのもあるでしょうケド。

【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。
実は入学が周りよりもちょっと遅め。
また寮ではひとり部屋だったりするらしい。
…本人としては同室の人がいたような気がするようだけれど。
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