雷が落ちる時って、だいたいしっとりだよね。(湿度的に)
あの頃のタマモクロスには親しい友人と呼べる者はいなかった。
今となってはオグリキャップに始まる永世三強組と楽しく過ごしているが、あの頃のタマモクロスはひとりぼっちだった。
『芦毛のウマ娘は走らない』
そんなレッテルがまだあった頃。
体格も小さく、血筋もそこまで有名ではないタマモクロスは人を避けて生活していた。
目立たないように、空気のように過ごしていた。
その頃のタマモクロスが食事をしていた場所は人気のない階段で。
ひっそりと、埃の被った階段に座りながら適当に購買で買ったパンをジュースで流し込んでいた。
「やぁ、隣いいかい?」
変わらない日々が続くと思っていた。
だが一変するのは唐突で。
現れた彼女はタマモクロスよりも小柄だった。
それでいて出ているウマ耳から彼女がタマモクロスと同じ芦毛であるということが嫌でも分かった。
否定も肯定もしなかったタマモクロスの隣に彼女はストッと座った。
「キミ、人気のないところ見つけるのが上手いなぁ」
「…どうも」
特段話すこともなく、ふたりして無言で昼食を食べ終わった。
こういう、はじめにひと言ふた言話して静かに昼食を食べるという関係が少しばかり続いた。
お互いに名前を名乗ることはなかった。
だから彼女が年上なのか年下なのか、どういった人物なのか、理解できたことはそうなかった。
それでもその関係はタマモクロスにとっては落ち着くもので。
だって彼女はタマモクロスをバカにしなかった。
模擬レースで良い結果になったと言えば「凄いね」と手放しに褒めてくれた。
周りのように「まぐれだ」と後ろ指を指すことなんて一度もなかった。
なのでタマモクロスは彼女のことを慕っていた。
自分のことを見つけてくれる彼女のことを慕っていた。が、
「タマ!先輩がな…」
彼女の視線はまた別の人に移ってしまった。
───オグリキャップ。
タマモクロスにとって大切な友人でありライバルの彼女。
普段ならニコニコと笑って話を聞いてやるのだけれど、今回に限っては笑おうとしても口元が引き攣る。
「タマ…?どうした、調子が悪いのか…?」
「…いや、大丈夫や」
彼女は未だに人に名前を名乗らないらしい。
でも見た目の特徴を聞いただけで彼女と分かるから。
友人に、こんな感情を抱いてはいけないと分かっているのに、
(アンタは、ウチのモンやったやろ…)
今は、あの頃よりも満たされた生活をしているだろう。
実力が認められて、仲の良い友人もできて…。
けれど、あの頃の彼女とともに過ごした静かな日々のことを懐かしく思ってしまうのもまた事実。
「あぁ…」
それだけを思考して。
人知れず出した声は、…ひどく掠れていた。
【白い稲妻】:
タマモクロス。
ある日出会った"彼女"に懐きつつ、ぼんやりとした独占欲を抱いていたら…なウマ娘。
オグリのことも好き、"彼女"のことも好き。
だがそれはそれとして…。
どうしたら、アンタはウチを──、