さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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『愛』でも『恋』でもなく、ただ純粋に。



ずっと、みてたの

昔に、言われたことがある。

 

『ねェ、チビ』

『なぁに、おじいちゃん』

『家の裏、お山があるでしょう?』

『うん』

『近づいちゃあ、いけないヨ』

『どうして?』

『チビは…気に入られるだろうカラ』

 

何に?とは、問えなかった。

何故なら祖父が痛いくらいに、まるで()()()()()()()抱き締めてきたから。

そして、祖父はこう言ったのだ。

『いいかイ?決して、あの山に近づいてはいけないヨ』と。

その日以来、僕は祖父の言いつけ通り、一度もあの山には行かなかったし、行こうとも思わなかった。

 

「…………」

 

だけど今になって思うのは、

 

「まぁ、小鳥の鳴き声さえ聞こえなかったもんなぁ」

 

───あの山。

 

 

むかしむかしの、話です。

ある日、ある時、その山に棲むモノの目に世にも鮮やかなほど叩き込まれた【存在】がありました。

その山に棲むモノは、山を管理するある強欲なヒトの家に『厄持って福となす』とでもいうかのように囚われて久しい(かげ)のモノだったので。

 

──その【存在(ひかり)】は、あまりにも眩しかったのです。

 

ずっとずっとずっと、他人を呪って生きてきたモノの目が焼けるほどに。

だから、ソレは許せなかったのです。

遠く遠く、山の上から眺めていた美しい【存在(ひかり)】が。

痩せ細って、枯れ枝のようになって、潰えてしまったことを。

それからというもの、そのヒトの家は次々と不幸に見舞われるようになりました。

それはもう、酷い有様でした。

作物は不作が続き、家畜は死に絶え、病も流行り始めました。

そうして、とうとうその家に住んでいた中枢の人々は皆死んでしまいました。

しかし。

 

『……』

 

モノが見つめる先には、います。

かつて、自分の眼を焼いていった【存在】の子孫が。

 

『……』

 

モノに、思考はありません。

ただ、あるのはどこをどうすれば他人を呪えるかという一点のみ。

ですが。

それでも。

 

『……』

 

山の上から【存在】の子孫を見つめる目は、ひどく優しくて。

モノには、『恋』も『愛』も分かりません。

けれど、ただ一つだけ分かることがあります。

 

『…………』

 

それが何かを確かめるように。

確かめるように。

モノはそっと手を伸ばし、 ──。

 

「はじめまして」

『───────』

 

その手が…掴まれた。

誰も掴んでくれなかった。

誰もがモノを恐れた。

だから、あの【存在(ひかり)】に焦がれたのに。

いま、いま、いま…、モノの、前にいるのは。

手を、握ってくれたのは。

 

「僕は"シルバーバレット"と言います」

 

かつて視た、自分を()()()()、【存在(ひかり)】に似た…。





山に棲むモノ:
かつてとあるヒトビトの家に飼われていた"(わざわい)"。
決して善にはなれない、他人を呪うしかできない存在。
だがそうであるが故に、誰も傍に寄ってくれなくて『孤独』だった。
でも、ある日視た【存在(ひかり)】に救われ焦がれ、【存在(ひかり)】に酷いコトをしたヒトビトの家をほぼほぼ滅亡させてから、今度は【存在(ひかり)】の子々孫々を護り始める。
危機感知能力に優れた【存在(ひかり)】の子孫に忌避されようが、()()()()()
あの【存在(ひかり)】の残り火(しそん)を、護ることができるのなら────。

────そして、永い時を経て、怪物は"ひかり"を視る。
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