表と裏は巧妙?
クルクルとコインが回り、受け止められる。
そんな、コイントスが繰り返される様をグローリーゴアはぼんやりと見守っていた。
コイントスは、サンデースクラッパが手慰みにする暇つぶしの内のひとつ。
…とは言っても何か考え事をしているのか、不可抗力などで邪魔をしてしまうと何も感情が浮かんでいない顔でジッと見られるのだが。
パチッ、クルクル…。
パチッ、クルクル…。
淹れてきたコーヒーをテーブルに置き、自分はソファーに座るサンデースクラッパの隣に座って口の中を湿らせる。
「…………ん」
「……どうしたの?」
「…………」
珍しいことに。
無言のまま、自分の膝の上に頭を乗せてくるのでその頭を撫でてやる。
すると満足そうに目を細めながら、コイントスは終わった。
特段変哲もないコインが照明に照らされ鈍く輝く。
「もう、コイントス飽きたの?」
「……」
「ハイハイ」
手を引かれ、頬擦りされ。
まるで猫のように甘えてくるその髪を指先で弄びつつ、ふと思う。
(……そういえば)
サンデースクラッパがこうして自分に甘えて来るようになったのはいつからだったか?
この家に来てすぐの頃はまだどこか遠慮がちというか、距離感があったような気がするが。
(あ、)
そうだったそうだった。
焦れた自分が捕まえに行ったのだ。
ゆっくりじっくりと進めて、やっと手中に収めることができた相手を。
手中に収めたからには、もう待つのは止めと。
逃さないように、離さないように。
ドロドロでグズグズの場所に沈めきって、
「…その顔、あまり外でしないようにね」
伸びてきた手が、ゆるく頬を撫でる。
意地が悪いと我ながら思ったが「どんな顔?」と問えば「悪いヒトの顔」と返ってきた。
「でもキミが可愛くて」
「はいはい」
「本当に思ってるんだけどなぁ……」
*
ぞわぞわ。
巧妙に隠されたソコから、滲み出てきたソレにチリチリと背筋が粟立つ。
見上げたそこは陽光がゆっくりと闇に呑まれていくところ。
夜というよりかは闇が鎌首もたげて僕ににじりよって。
(もう、逃げられないね)
まるで体の主導権を全部明け渡したかのように。
弛緩したままで、動かない体でゆるやかに、恭しく撫でられていくのをただ感じているだけしかできない。
「…好きだね」
「ダメ?」
「さぁ?」
腹筋を使って起き上がれば名残惜しそうに後を着いてくる。
「今日、ご飯なにがいい?」
「なんでも」
「…そう。買い物行ってくるけど何かいるものある?」
「ないよ。…でも着いてく」
「そっか」
満更でもない情に溺れて。
ふたりきりになるとドロッとしたものが出てくる【栄光を往く者】とそれを受け入れている【戦う者】。
スキンシップ過多だがよくよく見ると粘度というか湿度というかが…。