さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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───ちゃぽん。



釣り

走ることが好き、と言ってもそれは現役時代の延長線に過ぎなくて。

もはや生活の一部を趣味と言っているような有り様に「何か趣味を見つけてみては?」と補佐をしてくれている我が子にそれとな〜く促され、釣りが趣味の、また別の我が子から古い釣竿を貰い受け、釣りを始めてみたはいいものの…。

 

「…すごく釣れる」

 

ちゃぽっ、と水に投げたらすぐ魚がかかる感じ。

一時間かからずにバケツが魚でうじゃうじゃになる様相にリリースすること幾星霜。

「お父さんの釣り、あ○森みたいだね」などと着いてきてくれた子たちに言われてしまう始末である。

……でも流石にあれみたいに『またお前か!』ってなったりしないからね?

 

そんなこんなで今日もまた海へ赴き、遠に餌を付けずともかかる魚さんたちに感心しながらぼけーっと糸を垂らしていると、

 

『────』

 

ふと、聞こえてきた音に頭を振る。

…いや、どうせ潮騒の音を聞き間違えただけだ。

決して声とか、そういうのじゃない。

……そう思いながら目を瞑る。

しかし再び同じ音が耳を打ち、僕は観念した。

 

「…………」

 

無言のまま立ち上がり、その音のする方へと足を向ける。

一歩進むごとに鮮明になっていく"ソレ"に引っ張られて、

 

「危ないッ!!」

「!?」

 

体ごと、結構な力で抱きかかえられるのに息が詰まる。

「ごほっ」だか「え゛ふっ」だか、よく分からない咳をしながら視線を上げると、そこには見知った顔があった。

 

「何やってんだアンタ!!」

「そっちこそ!…ちょっと待って、締めないで締めないで」

「締めるに決まってンだろが!」

 

久方ぶりに会った甥っ子に、何故だかギチギチと身体を締められる。

痛いし苦しいし、というよりなんでここにいるのかもよく分からなかったけど、とりあえず離してもらおうと身じろいだところでようやく解放される。

 

「ふー…っ、ふー……っ。あ、チャンプくん、魚持ってくかい?」

「…要らねぇ」

「あらら」

 

 

おじが、海に()()()()()()人だとは聞いていた。

だが、あそこまでとは思わなかった。

バケツいっぱい、縦横無尽に泳ぎ回る魚の山は多分海からの『貢ぎもの』で。

それを嬉々としながらも、普通に海にお返し(リリース)するおじの姿には呆れを通り越して尊敬すら覚えてしまった。

 

「チャンプくん、ご飯食べて帰る?」

「…いいのか?」

「うん、いいよ〜。おじさん腕によりをかけて作るから!」

「へいへい」

 

ひょいと荷物を持って立ち上がるおじ。

その隣に陣取ると、どこからか。

…薄らと、でも、ふわりと。

 

───潮のにおい、が。





僕:
シルバーバレット。
潮のにおいがする人。
海に好かれており、釣りをすれば百発百中で釣れるが、そのすべてを海にリリースしている系神回避ウッマ。
でもその回避は大概紙一重であるので周りはいつもヒヤヒヤだとか。
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