さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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そして沈んだ。



託したモノ

それは、ハッと目が醒めるほどに眩しい"光"だった。

随分と遠くから見ているのに、まるで目の前で光っているかのように眩くて。

それでいて、今にも消えてしまいそうな"光"。

 

『ぁ、』

 

どこか【稲妻(電撃)】にも似て、しかしずっとやさしい…。

"光"だった。

…あぁ、"光"だったとも。

 

「父さん」

 

果たされなかった、『約束』を、覚えている。

あの日、自分は、あの日の"不甲斐ない自分"を許せなくて。

そんな中で見た"あなた()"を、今度はちゃんと見たいと思って。

『約束』、したんだ。

───また走ろう!

 

「…父さん?」

 

"あなた()"が見えなくなって、もうどれくらいだろう?

ずっと、瞼の裏に忘れられないまま、薄らと輝くモノ。

美しい記憶にも、できないまでに光り輝く"いつか"。

 

「父さん!!」

 

ガッ、と体にかかった衝撃にぱちりと瞬きすると、そこには我が子であるシルバーチャンプが。

…あぁ、そうだった。

 

「父さん、もしかして調子悪い?」

「いや、」

 

心配そうに自分を見つめる瞳に、重ねてしまう(ひかり)

 

「大丈夫だ」

 

 

俺の『憧れ』は、いつだって父さんだった。

しかし、父さんみたいになりたくて、トレセン学園に入学した俺にもたらされたのは血筋からくる偏見や多大な期待で。

父さんは言わずもがな、母も母で…"あるウマ"の全妹だという事実があったから。

だから俺は、そんな周囲の視線にさらされて。

自分には荷が重い『夢』を、託されて。

そして、

 

「…『約束』を、果たしてきてくれないか」

 

父に言われた言葉が、俺の、弱くやわらかいところに刺さる。

見ず知らずの人々の期待(ことば)なら、まだ呑み降すことができた。

でも。

けれども。

一番尊敬してる人(父さん)から、そう願われるのは───。

 

「…退路なんて、もう、ないじゃん」

 

ガラガラと、元より脆かった後ろが崩れる幻聴を聞く。

その幻聴(おと)を聞きながら、ぼんやりと俺は()()()()()()()のだ、と気がついた。

誰もが、群衆が、同窓生が、先生が、URAの偉い人が、…()()()が。

みんな、みんなして、俺に期待し(夢見)てくるから。

重くて、重くて、重くて。

仕方ないから、

 

「せめて、って」

 

思った、だけだったんだけどなぁ。

 

「父さんならって、」

 

思っただけ、だったんだけど、なぁ。

 

「…走らなくちゃ、」

 

だって俺の後ろに、

 

「もう、退路(みち)はないんだから」

 

進め。

ただ、進め。

退けば奈落。

だが、どうせ前も…。

 

「俺は、英雄(ヒーロー)じゃないから」





【芦毛の怪物】:
オグリキャップ。
果たせなかった『約束』を我が子に託したすがた。
その後悔に目の前が曇っているがゆえに、託された我が子がどんな顔をしているのか分からなかった。
…我が子が、自分ほど心が強くないことも。


という訳で、うら若きティーンに国中の期待を背負ってもらいましょうね!(人 の 心)
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