さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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弱かった僕と、強いキミ。



『呪い』

──こいつは絶対に俺達の期待を裏切らない!!

 

その、あまりにも聞き覚えがある言葉が耳に届いた瞬間、シルバーチャンプは思わず走り出していた。

 

「父さんッ!?」

 

後ろからは唐突に置いていかれた我が子が、慌てた様子で追い掛けてくる。が、シルバーチャンプは振り返らずに、むしろ速度を上げて走り続けた。

()()()()()

 

「はぁ、はぁ…」

 

たどり着いたのは今となっては立ち入りが出来なくなった関係者専用口。

飛び出してきたはいいものの…と自分の計画性のなさを恨むも、今更引き返すことなど出来ない。

 

──こう来たらもう、やるしかない!

 

シルバーチャンプが意を決して関係者専用口をくぐり抜けよう…としたところ。

 

「爺さん?」

 

お目当ての張本人が後ろから不思議そうに声をかけてきた。

手には自販機で買ったらしい冷たい飲み物が握られている。

 

「爺さん、来てくれてたのか」

「あ、あぁ…。プレアーも来てる」

「ふぅん?親父の方もか…」

 

目で促され、近くにあったベンチに座る。

こういうところ気が利くんだよな、我が孫ながらと自画自賛してシルバーチャンプはポツリポツリと話し出す。

 

「…大丈夫、か?」

「何が」

「ほら、その…『期待』とか?」

「別に」

 

サラッと。

そんなこと、聞くまでもないというがごとく。

 

「それぐらい重い方がいい」

 

──こいつは絶対に俺達の期待を裏切らない!!

 

「…っ、」

「爺さん?」

 

シルバーチャンプは、思わず目頭を押さえた。

 

(俺は……俺たちはなんて……なんてバカだったんだ!! )

 

そうだ、そうだったじゃないか。

この子はいつだって俺たちの予想を遥かに越えてきた!

期待?

重圧?

そんなものがなんだ!

そんなモノでこの子が潰れるものか!

むしろ、その逆だ!

この子は……!

 

「……っ、」

「なんで泣いてんの?」

 

()()()()()、俺たちに『後悔』させる子だ。

 

──こいつは絶対に俺達の期待を裏切らない!!

 

…その言葉の、なんと重いことだろう。

自分も、かつてかけられたことのあるその言葉(呪い)は、"レース"という『世界』から離れた今も自分を苛んで止まず。

 

(…)

 

ズキズキと胸のあたりが軋み、頭痛がする。

動悸もして、息も早くなって。

 

(…いや、ホントにトラウマだな)

 

思わず、自嘲する。

それでも、とシルバーチャンプは思う。

 

(どうにかして、この子を守らなければ)

 

"あの日"の自分よりも、ずっとずっと強い可愛い孫。

でも『強いから大丈夫だ』と放っておくなぞ、出来ない。

"あの日"、壊れてしまった自分だからこそ、強く、そう…。





【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。
"ある言葉"がトラウマなただ一介のウマ。
精神強度はまぁ並。
しかし遺した影響力は…?
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