さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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運命の人!



嗚呼、貴方は──

ホワイトリリィは溺愛されて育っていた。

なにせ父-ホワイトバックが最愛と言ってはばからない妻の生き写し兼忘れ形見なのだからさもありなん。

しかし、競走の世界に置いている身ならいざ知らず、ただ一介のウマ娘でしかないのに父親のガードが強い結果、ホワイトリリィは───()()()()()しまっていた。

 

「はァ、」

 

元より、学生時代から学校と家の往復ばかりで、恋愛経験皆無な年齢=…だ。

いや、かつては父お抱えの装蹄師さんに子どもらしく『大きくなったら結婚する』などと宣った記憶もある。

 

「はァ……、」

 

とは言え。

やっと働くことを(『パパ嫌い!』だのなんだの言って)許してもらった身。

多少の"嫌なこと"は飲み込むつもりだったが、

 

(だる…)

 

めっちゃ口説かれる。

ホワイトリリィの世界はほぼほぼ父親と自分+親族や父が懇意にしている人しかいなかったから「可愛い」とか「美人」だとかいう褒め言葉を世辞だと思っていたのだ。

しかし、働き始めて。

業務なんてそっちのけで会うヤツ会うヤツに口説かれる。

ホワイトリリィとしてはちゃんと働きたいのに、『君みたいな可愛い子にはもっと良い職場があるよ』とか。

 

「はァ……」

 

そんなこんなで毎日が憂鬱なホワイトリリィだった。

 

「あ゛?」

 

そう苦悩しながら帰宅の途に着いていると不意に掴まれた手。

そして、

 

「俺、アンタに惚れた!」

 

───彼女はその日、『運命(さいあい)』に出逢う。

 

 

かつて。

ホワイトバックが愛娘-ホワイトリリィに施していた溺愛っぷりは町に住む者なら老若男女が知るところであって。

たしかにあの娘は母親に似たから心配になるのも分かる、と納得する傍ら、

「でもホワイトリリィちゃんは…まぁ」としゃーないしゃーないする人も少なくなかった。

たいがい仏頂面なものの、基本的に彼女は礼儀正しく優しい娘だったし、なによりも父親想いで健気な子だったから。

故に。

 

「こんちゃすおばさん。おら」

「ども…」

 

男の影など(父親以外)なかったホワイトリリィがガッシリと腕を組んでまで連れ添う見知らぬ男に町の人間は大わらわ。

年配の者たちは「あの娘バカが!?」と驚き、ホワイトリリィと同年代〜下世代は「あの売られた喧嘩は高価買取、喧嘩売ってきたヤツは全員泣かすが座右の銘なガキ大将(アイツ)が!?」と目を剥いた。

 

「…ふふ」

 

そして、当のホワイトリリィと言えば。

 

「なんだ」

「いや…はやく帰りてぇなって」

「…そう、か」

 

まるでご機嫌な猫のように連れ添う男との距離感を、

 

(……悪くない)

 

少し。

ほんの少しだけ、心地良いと思っていた。

 





【白百合】:
ホワイトリリィ。
史実より1973年生まれだが、父であるホワイトバックが生存していた1978年まではそんな父に付かず離れずの溺愛をされていたため、ホワイトバック死後でやっと繁殖OKになったウッマ。
なのでウマ世界でも競走バではない牝バとして見ると行き遅れの部類で、『運命(さいあい)』である【電撃の差し脚】と出逢うまで年齢=…だった。
でも初恋は家お抱えの装蹄師である【神賛(ザン)】さんだったとか(なお史実より生産牧場の人間はなけなしの金を出してつけようとしていたらしいが…娘溺愛パッパさんがね)。

【先祖返り】:
ホワイトバック。
娘溺愛パッパ。
史実では晩年最愛との間に生まれた娘を守護(まも)っており、「パパの目が黒いうちは許しません!(ガチギレ)」してた。
故にウマ世界で「おっきくなったらザンさんの〜」した愛娘にえげつないくらいピシッてそう。
許さん…許さんぞ…ッ!!
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