さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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いずれ来る、いつかを待つ。



長い、永い余生

オレが愛したヤツはみんな、オレを置いていなくなる。

 

はじめは、母だった。

元より虚弱な女性(ヒト)で、オレがデキた際には『自分の命か、子であるオレの命か』と選択に迫られ、結果、親父の懇願を振り切りオレを産んで、産後の肥立ちが悪くなって儚くなった。

 

次は父だった。

父の、母に対する愛は有名で、母が儚くなった折の憔悴っぷりは目もあてられないほどだったと聞くが、それでも父はオレを愛してくれた。

最愛の母を、コロした俺を。

いくらオレが母に生き写しだろうが、忘れ形見だろうが、父がオレを愛せる理由には、ならなかったろうに。

 

『ひとりにして、ごめんね』

 

その次は旦那だった。

オレより5つ上の精悍な顔つきの男で、周りが言うには『目付き悪くて怖い』だとか『愛想ない』だとか。

でも、オレだけは知ってるんだ。

アイツ、照れ屋だけどちょっと意地悪だって。

オレが風邪をひいて寝込んだとき、いつもつきっきりで看病してくれたのもヤツだ。

『お前は俺が守ってやるからな』と、こんな男勝りなオレを見て言ってくれたのは彼だった。

だけど、アイツはオレを置いていった。

結婚する時に「オレより長生きしてくれ」って言ったら力強く頷いたというのに。

『ごめんな』なんて信じられないくらい微かな声で告げて、泣き喚いて縋るオレを見て嬉しそうに、心底愛おしそうに…眠りやがった。

 

で、その次はオレが腹痛めて産んだガキたちだ。

流石にガキ共には置いていかれんだろうとあぐらをかいていたら置いていかれた。

居住している場所が遠いなり何なりで看取れなかったヤツもいれば、間に合って看取れたヤツもいて。

その誰もが『おかあさん、だいすき』なんて、曲がりなりにも良い母親だったと言えないオレに、焦点の合わない目で告げて。

オレは、そんなガキ共の最期を看取った。

『おかあさん』『手、にぎって』とオレを呼ぶ声が、段々と小さくなっていき、やがては聞こえなくなる。

そうして静かになる部屋で独りきりになったとき、いつも思うのだ。

ああ……また置いていかれたな、と。

 

「…、」

 

さびしい。

さびしい、淋しい、()()()!!

誰も、オレの隣にあってくれない。

あって欲しい、()()()()()()()()()()

オレを置いて…!

 

「なんで…」

 

オレが、何をしたって言うんだ。

ただ、愛して、愛されたかっただけなのに…!

 

「なんでだよ……っ」

 

こんな結末を望んでたわけじゃないのに!

ああ、誰か。

誰でもいい。

オレのそばにいてくれ。

もう置いていかれるのはいやだ。

さびしくて、さびしくて、たまらないんだ……!!

 

「……だれか……」

 

そんなオレの声は誰に届くでもなく虚しく消えていき──そしてオレはいつもの如く目を覚ますのだ。

 

(……またか)

 





【白百合】:
ホワイトリリィ。
愛した者に置いていかれる運命(さだめ)ではあるがそれを差し引いても長生きだったウマ。
気づけば自分の弱さをさらけ出せる相手もいなくなって、目に入れても痛くない我が子たちもみな…。
でも、孫や曾孫、果てには玄孫までいるので。

子どもたち:
それぞれの道を歩みつつも最終的には親である【白百合】よりも先に儚くなってしまった。
いちおう生存√では長子である銀弾が一番長生きな模様。
また全員が全員『おかあさん大好き』と言っていく。
『愛してる』とは言わない。
だってそれは、【白百合】の最愛の伴侶である【電撃の差し脚】の特権なので。
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