さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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みんなに『シロさん』『シロちゃん』と呼ばれては本名を認識されていない系大名バさんェ…なウマ世界でのあるイベントの話。



習うより慣れろ!(無慈悲)

ある地域では一年に一度、ウマとの触れ合い会がある。

たしかに人とウマは共生しているとはいえ、人口比率ではどちらが多いと問われると答えは圧倒的に人の方だ。

学校のクラスを見ても一クラスに数人ウマがいれば多いというぐらいには希少な存在なのだから。

 

「……まぁ、そうだよねぇ」

『シロおじちゃん!』

『シロちゃん!』

『シロにーちゃん!!』

「はいはい、ひとりずつひとりずつね〜」

 

ワイワイと自分に群がる子どもたちの相手をしながら『シロ』と呼ばれているウマは思考する。

 

(この子たちが知っている"ウマ"って、ほとんどが『テレビに出てる人』っていうイメージだろうしなぁ。力の差とか、もし衝突したらっていうの知らないと危ないだろうし…)

 

子どもたちよりも少々大きいだけの体格ながらも『シロ』はひょいひょいとその子たちを数人持ち上げるとクルクルとゆるく回転して遊んであげる。

きゃっきゃっと楽しげにする子どもを横目に、『シロ』はまた自分と同じように子どもに囲まれてはオロオロしている我が子に親指を立てた。

 

(わかるわかる。はじめは怖いよね〜。そういう教習も受けた分、緊張もひとしおだよねぇ)

 

現役を引退して、そう時間の経たないころから毎年このイベントに参加して、慣れている自分とは違い、今年初めて参加するあの子にとってはなかなか大変なことだろうなぁと苦笑する。

それでもなんとか笑顔で対応しているあたりさすがだと感心しながら、自分も負けていられないと気合を入れた。

 

 

「お疲れ〜」

「…はい」

 

ぺと、と自販機から買ってきた冷たいペットボトルを当てるとピッ!と飛び上がった姿にクスクスと笑えばジト目で見られた。

 

「ごめんごめん」

「もう…」

 

今日もいい天気だった。

それにプラスして、元気な子どもたちにエネルギーを吸い取られたか、くったりしている様子に申し訳なく思いつつも労うように頭を撫でれば気持ち良さげに目を細める。

そんな仕草にも癒されながら休んでいると、

 

「迎えに来ましたよ」

「お、いいところに」

「…」

「……あの、シンゲキは大丈夫で?」

「熱中症にはなってないみたいだけど…。気疲れとか」

「あぁ、」

「運転ありがとね」

「いえ…。シンゲキ、立てます?」

「…ん」

 

先に鍵を受け取り車を開ける。

 

「さ、帰ろっか」

 

 

「つかれた…」

「ははは。…ちゃんと、疲れは取れた?」

「寝たらだいぶ楽にはなった」

「そう。…ご飯食べる?」

「ん」

「食べたら歯を磨くんだよ」

「分かってるよ───父さん」

「よろしい」





『シロ』:
町のみんなからはそう呼ばれている系ウマ。
穏やかで大人しいので過去にはしっぽの毛を引き抜かれたことも。
またシンゲキくん以外にも子どもがいっぱいいる。

『シロ』さんちのシンゲキくん:
『シロ』の子ども。
元はきょうだいたちと共に上京していたが最近帰ってきた。
その折に父である『シロ』から誘われ、イベントに参加することに。
なお教習をみっちり受けた結果、かよわいいのちを恐れる怪物みたいな反応をイベント中ずっとしていたとか…?
頑張って慣れようね!(無慈悲)
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