さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ある種の信頼。



きっと乞うのは自分の方

「キミは、」

 

僕のために、泣いてくれる?

そう問いかけるとひどく怪訝そうな顔をされた。

 

「いきなりどうした」

「いや、ね」

 

ちょっとした、思春期特有の感情からだ。

『もし自分が居なくなったとして』という。

 

「ミスターも、ルドルフも、…悲しんではくれなさそうだなって」

「……」

「だって、あのふたり強いもんねぇ。どうせ、僕のことなんて一時のことで、すぐに切り替えて前向いて歩いていきそう」

 

ただの雑談だ。

それ以外に、ない。

 

「…それで?あたしが何だって?」

「あぁ。でも、キミは悲しんでくれそうだなって」

 

星というには熱すぎて、太陽というには近すぎる光を宿す瞳が見開かれる。

 

「……なんだいその顔」

「お前にしてはずいぶんと弱気だと思ってな」

「ひどい言い草だ」

 

くつくつ笑いながら、話は続く。

 

「まぁ、確かにお前がいなくなったらあたしは泣くだろうよ」

「だろう?」

「それもワンワンとな」

「…そこまで?」

「あぁ。みっともないくらい泣きわめくぞ」

「へぇ……」

 

それはなかなか見てみたい光景だった。

 

「だから安心しろ」

「それじゃあまるで前提が前提じゃないか」

「当たり前だろ。お前がはじめた話なんだから」

 

くだらない話。

いつものように邪魔が入るでもなく、ただ淡々と。

熱も色もなしに、決まりきった台詞をなぞるように。

 

 

忘れられるは、怖い。

そう微かに呟かれた音を、拾った我が耳を呪えばいいのか、はたまた。

己が隣に座した背は嫌に華奢で。

「僕のために泣いてくれ」という何とも傲慢な言葉に、「なら、あたしのために『生きる』と言え」とハッキリ言えず。

掴んでいなければ、どこか勝手にフラフラと飛んでいく凧のような、もしくは美しく愛らしい金魚のようなソイツに。

手を伸ばしても届くことはないことは分かっていた。

それでも伸ばしてしまう手をどうにかしたい。

 

「……何してんだ、あたしは」

 

頭を抱えてため息をつく。

その吐息すら熱い気がしてならない。

 

(……こんな感情知らない)

 

いつの間にか芽生えていたこの気持ちは。

目を開けても閉じても灯ってやまない光は?

まだ弱い光でしかなかったころの。

 

「、」

 

おだやかなものだ。

けれど手を伸ばさずにはいれなくて。

綺麗だった。

白い光。

近づきたかった。

近づけば───()()()()と分かっていても。

本能が、厭うても。

 

(嗚呼、)

 

いつか、総てを包むだろう"光"を。

 

(あたしを、…()()、だけを)

 

てらして。

てらして、くれよ。

他には何もいらないから。

ただおだやかに、照らす、

 

お前(ひかり)、を」





【世界制覇の大エース】:
カツラギエース。
『自分のために泣いてくれ』と乞われつつ、でも本心は言えない誰か。
まだおだやかで、微かだったころの"光"を目の当たりにしていて、それでいて"光"に焦がれている。
総てを焦がす"恒星"ではなく、すべてを包み込む"ひかり"、を───。
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