ひとりぼっちは、嫌いだけれど。
じっ、と見てくる目の多さが、まるで何処ぞの映画の主人公にでもなったようで。
ただの一介の人間に、みんながみんな
自分と同じように"あの門"を目指すもう一人を見ている人もいるけれど、大体が見ているのは───
あの
『この世界』を知っている者はみな、
「…………」
そんな視線を全身で受け止めながら、影はゆっくりと歩き出した。
一歩進むごとにざわめきは大きくなっていくけど、もう気にする余裕もない。
今はただ、前だけを見て歩くだけだ。
「…………」
しかし。
歩けども歩けども、視線は飽きもせずに追ってくる。
それはいい。
別に
問題は、自分の中に湧いてきた別の感情だった。
(……なんだろう)
さっきまでとは違う種類の胸騒ぎを感じる。
何やら得体の知れない焦りのようなものを感じて、思わず足を止めてしまった。
すると、どうしたことだが自分の脚にまとわりつく泥のような、手のような。
「……」
振り払おうか、振り払うまいか。
そう考えて、考えながら脚を少し動かすと素直に離れていったので『そういうものか』と思い直す。
引き止められることはない。
ただ、そっと脚に触れられるだけ。
そしてまた歩みを再開すると、やはりついてくる。
今度は腕にも絡みついてきたが、それも同じように少し動くと離れていった。
……なんだこれは?
一体どういうことなのだろうか。
わからないまま、だけど特に気に留めずにそのまま進んでいく。
それからしばらく歩いていくと、ふと、
…『いかないで』?
それとも、……『こっちだよ』?
「……?」
声ではない何かに引き留められて、立ち止まる。
すると、今度は背中を押してくれたような気がして振り返った。
そこには誰もいないし何もなかったけれど、確かに誰かがいたように思えた。
「ありがとう」
感謝の言葉を口にすれば、…どことなく手を振って見送られた気がした。
・
・
・
"門"というのは思った以上に危険なものだと思う。
何故なら"門を潜る"というのは、つまりは異世界へ足を踏み入れるのと似たようなものではなかろうか。
入って、また出られるのならまだいい。
でも、一度招かれたが最後…
「なんて、ただの冗談だよ」
とんとん、とステップを踏むように歩くソコは薄暗い場所。
自分にとっては慣れ親しんだ場所だが…歳若い者が来るには面白みもクソもない場所だろう。
「ま、気長に待つさ」
一度入ってしまったら、戻れない場所だったのか。
進み続けるしか、許されない場所だったのか。
…まぁ、ただの夢想で思案にしか過ぎないのですが。