しかし、そう思うのは───。
「いいなァ…」
【日本の総大将】、か。
そう呟いた自身の声は、思わず嗤ってしまうほど掠れていた。
大した経歴もないままに、血筋だけで期待されて挑んだ偉大なる門にて、膝を着いてしまった俺は。
"最悪"には至らないまでも、元のように走ることは絶望的だと診断された俺は。
「いいなァ、───日本総大将」
ただ、羨んでいた。
誰もが一心にかける声援をどこか画面越しに見るような心地で、同じ文言をレコードのように、ただ。
俺への期待は、大体が"あのウマ"由来で。
みんな、"あのウマ"の残した
だから、その輝きをみんな、もう一度見たいんだと、思っていた。
…でも違ったらしい。
「だれでも、いいんだな」
───俺じゃなくても。
目の前には、あらんかぎりの熱狂があって。
それは、俺なんかじゃ到底敵わないような熱量と想いが乗せられたもので。
それがなんだか無性に悔しくて、悲しくて。
気づけば俺は、自分を溶かすよに、人混みの方へと歩を進めていた。
*
"綺麗"だと思った。
本当は、そう思ってはいけない類のモノであったのに。
その時、誰もが見惚れていた。
『頑張れ』の声も忘れて。
瞬きすらもったいないと。
その一瞬で潰えるのだと。
それはまさしく───"流星"だった。
崩れゆく"星"のひとひら。
最後の煌めきを放つように、燃え尽きるように駆け抜けるその姿。
それを見た瞬間、誰もが息を呑んでいた。
「……っ!」
呼吸なんてしている暇はない。
今この目に映っている景色を逃すわけにはいかない。
そんな強迫観念にも似た衝動だけが心を突き動かした。
そして、"流星"はゴール板を駆け抜けたのだ。
歓声はなかった。
ただ、静寂だけがあった。
まるで時の流れを忘れたかのような刹那の中、たったひとりのウマの姿だけを焼き付けようと、全ての観客が目を奪われていたからだ。
しかしそれも束の間、すぐに怒号とも思えるほどの喝采が響いて。
───
・
・
・
自らが"星"であることを、本人だけが知らない。
「俺が"星"だァ…?」
「ンなワケねェだろ。"星"ってのはなァ、」
同じ文言。
きっと、いつ聞こうが変わらないだろう。
何度言おうと、あのウマは信じない。
「俺ァ只人だよ。"星"に手を伸ばして、愚かにも『
それでも、いつか気づいてくれるだろうか?
貴方が如何にして、
それに気づいたとき、貴方はどうするんだろうか。
(…でも、)
貴方はその"事実"を───。
【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。
ヒーローに憧れていた子ども。
でもそうはなれなかった。
しかし、周りは…?
とか言うて、モンジューさんが「エルコンドルパサー、
キミというウマに出会えたことに感謝を───」
的な独白、その最後の「を──」の部分で88秋天のオグリの如き眼光でヌッとやって来てるんですけどね、コイツ(脳焼きの音)。