誰も見ていない。
だから。
シルバマスタピースというウマの目に映るのは、たったひとり。
それ以外は、まるでいないかのように目に映らない。
「ねぇ、」
だから。
その日も、キミの目に自分は映らなくて。
…あの日、キミたちの背を見て。
憧れた。
あの小さな背にも、───
美しい、均整のとれた身体だ。
貴公子、と呼ばれるのも納得するぐらいに。
美しい栗毛は日の光を反射して、燃えるように。
キラキラ、キラキラ。
それに、まるで羽虫のごとく、惹かれて。
「…キミは、えっと、」
本当に、あの子以外に興味ないんだね。
そう言いたくても、あの子も、キミも幼なじみ揃って同じようなモノだから。
仕方がないなぁ、と思いながら。
「ボクのこと、忘れたの?」
ジリ、と"あの日"与えた圧を与えて。
そうしてやっと、ボクのことを思い出したらしいキミに───笑う。
「…皇帝が、貴公子ごときに何の用?」
「そんなこと、思ってもないくせに」
*
他人はボクを【マイルの皇帝】と呼び、キミのことを【マイルの貴公子】と呼ぶ。
同じ時代に現れた同路線のふたりの怪物。
「…というワケだから、仲良くしようよ」
「お前は、僕を通してあの子に近づきたいだけだろう」
「へぇ?ボクがそんな浮気者だと?」
「…みんな、そうだからな。まぁ、仕方はないが」
その目に映るのは、諦念。
自身も同じ光にいっとう焦がれながらも、自身がその影になることを…受け入れた目。
(あー……)
それを見てボクは、我ながら悪いヤツだなぁと考えながらも内心ほくそ笑んだ。
だって誰もライバルがいないってことだもの。
みんながみんな、あの子に焦がれて。
あの子の影が目に焼き付いてばかりで。
あの子を守るキミを敵視してばかりで。
だぁれも、──キミを。
「…何の真似だ」
「いいや?別に」
たしかに、ボクもあの子に焦がれているさ。
けれど、キミにはもっと…
何故ならあの子よりキミの方が、
「ボクのそばに来てくれるからね」
「は?」
ずっとずっと誰彼に囲まれているあの子よりも。
ずっとずっとずっと。
みんなキミを見ないから。
ボクだけしか、キミを見ていないから。
「嘘だ」
つぅ、とキミを指先で撫でればそんな言葉を吐かれる。
憎々しげに、また懇願のように。
「うん、そうだね。だから嘘じゃないって証明のために、早くボクのものになってくれないかなぁ……」
「断る」
即答された言葉に思わず笑い声をあげる。
それにますます不機嫌になるキミの顔すら好ましいと思ってしまうあたり、もう手遅れかもしれないけど。
でも、それでも。
「キミが欲しいんだよ」
この気持ちは本当なんだ。
「……僕は、」
「ん?」
「……いや、なんでもない」
何かを言いかけた口を閉じる。
それを少し残念に思いつつも、聞き返せばきっとキミは答えてくれないだろうと考えて諦める。
「ふぅん……。じゃあ、とりあえず今はそれで許してあげる」
「許すも許さないも……っ!?」
「ははは。なんだい、そんな鳩が豆鉄砲食らったような顔して」
ちょっとばかし、目と鼻の先…に顔を寄せただけなのに。ね?
【マイルの皇帝】:
ふたり共に執着しているが、どっちかというとより執着が重いのはマス太の方な御方。
ぼんやりとマス太を手にすれば自ずと僕も着いてくるんだろうなぁ…という打算もある。
今日も可愛いね。
マス太:
シルバマスタピース。
幼なじみの前では緩んだ穏やかな顔を見せるが一度幼なじみと離れると苛烈な面が見え隠れするウッマ。
自立している風に見せて不安定。
なので落ちたら落ちっぱなしになる。
それはもう…幼なじみとの関係性で浮き彫りの事実なので。
幼なじみ:
マス太の幼なじみ兼執着という名の台風の目。
幼なじみであるマス太とそこそこの依存関係を築いているが「マス太が幸せならそれでいいと思う」という、マス太がそう言うなら自分も従うよのスタンスなので攻略はさほど難しくない。
でもほんの少しでもマス太を悲しませたら…する気概は十分にあるので注意されたし。