さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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似ている。


最悪なまでの、災厄

子どもが生まれた。

先輩が、忌避する伝説(ひと)とよく似た子ども。

"あの伝説(ひと)"の生まれ変わりだと、世間がにわかに沸き立つほどに、そっくりな。

 

「よォ、ガイセイ」

 

けれども、先輩はその子を忌避しなかった。

「子どもに罪はないだろ」なんていって、大人しいながらも懐くその子を、可愛がっていた。

 

(どうして)

 

ふと、思う。

僕は先輩が忌避する"あの伝説(ひと)"が嫌いだ。

忌避するならば目に入れないようにすればいいのに、忌避していると言いながらも先輩は"あの伝説(ひと)"を見ずにはいられなくて。

それに気づくたびに嫌悪で顔を歪めていたから。

だから、きっとそうなんだと思っていたのに。

 

(そうじゃなかった?)

 

───コイツ、いいウマになるぜ。

 

そう言って笑う先輩の顔を見て、僕の中で何かが崩れた気がした。

 

 

「おとうさん」

 

ふわりと笑う顔が、ひどく心を掻き乱して。

次に「おじさん」と先輩の方に寄っていくのに、思わず引き止めそうになった。

取らないで、なんて聞き分けのない子どもの癇癪みたいで。

でも、我が子ながらその子は、シロガネガイセイは。

見たくなくても、目に入れずにはいられない光源で。

圧倒的で、魅力的で。

『強過ぎてつまらない』なんて言われながらも、それでも輝いてやまない。

 

…あぁ、ホント。

"あの伝説(ひと)"そっくりだ。

嫌でも先輩の目を奪ってしまう、"あの伝説(ひと)"。

それを幻視して、それが眩しくて目を逸らせば、「どうした?」という声と共に頭を撫でられる感触があって。

それが嬉しいはずなのに、何故か無性に泣きたくなってしまって。

気づけば、僕は先輩の手を振り払ってしまっていた。

 

「…【飛行機雲】?」

「……おとうさん?」

 

不思議そうな声が聞こえる。

けれどそれに答えている余裕はなかった。

だって、今口を開けば、余計なことまで言ってしまいそうだから。

 

「……ごめんなさい」

 

ただ一言だけ残して、その場を去ることしか出来ず。

後ろから追いかけてくる気配を感じたけど、それも無視してしまった。

取り敢えず、ひとりになって落ち着きたかった。

凪がなくては、自分が何をしてしまうかわからないくらいには動揺していて。

そんな状態で一緒にいれば、何をするか分かったものじゃないと思ったからだ。

 

「…………」

 

人気の少ない場所を探して歩いていれば、いつの間にか袋小路へと来ていて。

そこで追いついたらしい先輩に手を掴まれた。

「何があった」「大丈夫か」と問うてくる声も、もう…。





【飛行機雲】:
好きじゃない相手に我が子が似て、その我が子が先輩に懐いて、先輩も我が子を可愛がっている姿に「…」しているすがた。
情緒ぐちゃぐちゃ。

【銀色の激情】:
先輩ことシルバアウトレイジ。
"ある存在"を忌避しながらも無視できない。
血縁に比べると執着がないとはいえ、他人から見るとシルバアウトレイジも"ある存在"を見ているのだ。

【再来】:
シロガネガイセイ。
お父さん好き。おじさんも好き。
情緒がちょっと子ども。
走ってさえいれば大概機嫌がいいとか。
なので無邪気な顔でよく地雷になる。死屍累々。
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