さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ぼやぼやと揺らぐ音。
けれども"呼ばれている"と理解し。
ふわふわと漂う中で、それでも。

押し上げられる、ままに。



舞台へあがれ

ゆらり揺られて。

どこに漂うでもなく、ゆらゆら。

そうしていると、ふと、自分を呼ぶ声がする。

無視して眠ろうにも、ザワザワと囁き続けて止まない声は、どうやら自分を呼んでいるらしいのだった。

 

「……なんなんだよ」

 

仕方なく目を開けて起き上がる。

すると、途端に静まり返る周囲。

まるで何事もなかったかのように、シンと静まり返る。

そんな空間の中でユルユル頭を振る。

それから。

 

(また…)

 

眠ろうとするたびに起こされる。

もうウンザリだ。

気づいてからというもの、ずっとこんな調子なのだ。

眠るたび、目覚めるたび、何度も何度も繰り返し同じ声を聞かされる。

それは、薄暗い世界だった。

何もかもを覆い隠すような薄暗い世界。

そこには自分だけ。

ただ独りきりの世界。

そこに響く、無数の声。

 

『───』

 

誰かの声。

 

『───』

 

何かを求める声。

 

『───』

 

誰かを求める声。

 

『───』

 

助けを求める声。

 

『───』

 

救いを、求める声。

そのすべてが耳元で繰り返されるのだ。

そして最後に必ずこう言う。

 

『───』

 

だから自分はそれに答える。

 

『───』

 

けれど、答えたはずの言葉は誰にも届かない。

いつものように、ただ空しく反響し消えていく。呑まれていく。

沈む、眠る、墜ちる。

心地よく、眠れる場所。

けれど、

 

(僕を呼ぶのは、…誰?)

 

僕を、押し上げるのは───。

 

 

それは水底に沈めるには惜しく。

藻屑となるには、惜しく。

沈んでもなお、『夢』のよすがにされる形はありありと。

【███】にとって、己の形とはすなわちそれであったのか。

はたまた、それを形作るものはやはりそれであるのか。

いずれにせよ、それは確かに【███】の一部であり、【███】自身でもあった。

 

うたかた。

微睡むように目覚め、覚醒するように眠る。

曖昧な境界の中にあって、それでも確かな存在として在った……はずだった。

それが今、揺らいでいる。

否応なく。

まるで水面に浮かぶ波紋のごとく。

あるいは、風前の灯火の如く。

 

「…………」

 

【███】はゆっくりと目を開く。

目の前に広がるのは、薄暗い世界に射し込む陽光。

思わず瞬きをしてしまうほどに眩しい虹のような色に満ちている。

……ここはどこだろう?

ぼんやりとした意識のまま、ゆるりと身を起こす。

見慣れぬ景色が広がっている。

…いや、元からこうだったのかもしれない。が、

 

────呼び声がする。

 

その声のままに、ポンと水を蹴れば推進。

導かれるように、上へ上へ。

スポットライトのような、陽光の元へ。

 

────ぱちゃり。





おかえりなさい。
そして。

───はじめまして。
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