ぼやぼやと揺らぐ音。
けれども"呼ばれている"と理解し。
ふわふわと漂う中で、それでも。
押し上げられる、ままに。
ゆらり揺られて。
どこに漂うでもなく、ゆらゆら。
そうしていると、ふと、自分を呼ぶ声がする。
無視して眠ろうにも、ザワザワと囁き続けて止まない声は、どうやら自分を呼んでいるらしいのだった。
「……なんなんだよ」
仕方なく目を開けて起き上がる。
すると、途端に静まり返る周囲。
まるで何事もなかったかのように、シンと静まり返る。
そんな空間の中でユルユル頭を振る。
それから。
(また…)
眠ろうとするたびに起こされる。
もうウンザリだ。
気づいてからというもの、ずっとこんな調子なのだ。
眠るたび、目覚めるたび、何度も何度も繰り返し同じ声を聞かされる。
それは、薄暗い世界だった。
何もかもを覆い隠すような薄暗い世界。
そこには自分だけ。
ただ独りきりの世界。
そこに響く、無数の声。
『───』
誰かの声。
『───』
何かを求める声。
『───』
誰かを求める声。
『───』
助けを求める声。
『───』
救いを、求める声。
そのすべてが耳元で繰り返されるのだ。
そして最後に必ずこう言う。
『───』
だから自分はそれに答える。
『───』
けれど、答えたはずの言葉は誰にも届かない。
いつものように、ただ空しく反響し消えていく。呑まれていく。
沈む、眠る、墜ちる。
心地よく、眠れる場所。
けれど、
(僕を呼ぶのは、…誰?)
僕を、押し上げるのは───。
*
それは水底に沈めるには惜しく。
藻屑となるには、惜しく。
沈んでもなお、『夢』のよすがにされる形はありありと。
【███】にとって、己の形とはすなわちそれであったのか。
はたまた、それを形作るものはやはりそれであるのか。
いずれにせよ、それは確かに【███】の一部であり、【███】自身でもあった。
うたかた。
微睡むように目覚め、覚醒するように眠る。
曖昧な境界の中にあって、それでも確かな存在として在った……はずだった。
それが今、揺らいでいる。
否応なく。
まるで水面に浮かぶ波紋のごとく。
あるいは、風前の灯火の如く。
「…………」
【███】はゆっくりと目を開く。
目の前に広がるのは、薄暗い世界に射し込む陽光。
思わず瞬きをしてしまうほどに眩しい虹のような色に満ちている。
……ここはどこだろう?
ぼんやりとした意識のまま、ゆるりと身を起こす。
見慣れぬ景色が広がっている。
…いや、元からこうだったのかもしれない。が、
────呼び声がする。
その声のままに、ポンと水を蹴れば推進。
導かれるように、上へ上へ。
スポットライトのような、陽光の元へ。
────ぱちゃり。
おかえりなさい。
そして。
───はじめまして。