さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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キミの前ではカッコつけさせて。



高鳴る鼓動

絶対に、執着してはいけない相手に、執着してしまった───。

それに気がついたのは唐突か、または必然か。

「どうしたの?」と口では心配しながらも、その目はまったくもって此方に興味のひとかけらも向けていなくて。

愛想笑いは完璧で。

ボロのひとつもないように。

深いところに踏み込ませないまま、浅いところで他人に好意的に見られるように。

まるでシュミレーションゲームの、決まりきった選択肢のように。

無意識下で、『正解』を選択できるその様が、ひどく気持ち悪かったのだ。

それはきっと、その存在のことを好ましく思っているからこそ。

自分の知らない誰かと楽しげにしている姿を見ると、胸の奥底がちりちりと焦げ付くような痛みを感じる。

これが嫉妬という感情なのだということは知っていたけれど、まさか自分がこんなになるとは知りたくなかった。

だからこれは違うんだと言い聞かせる。

自分はただ、あの人のことが知りたいだけなんだと。

そうして知れば知るほど、もっと執着してしまうことを分かっていたはずなのに。

 

 

「相変わらずモテるねぇ」

「…僕なんかよりキミの方がモテるでしょ?」

「いやいや〜、シルバーには負けるよ」

 

そう言いながら仲の良い友だちがやるように、シルバーバレットの肩に自らの腕をかけたミスターシービーはバレぬように目を細める。

自分たちに向けられる四方八方からの熱い視線に気がついていないのか、それともあえて無視しているのかまでは分からないが、いつも通りな友人の様子に思わず苦笑するしかない。

 

(まぁ、アタシとしてはありがたいけど)

 

友人が自分以外と話しているところを見るだけで、この心はざわつくのだから。

だからこそ、…こうして牽制じみたことをしている。

友人は他人をそう深くまで踏み込ませない。し、スキンシップもそう取りたがらない。

…というワケで、こうやって触れられて、近づける分リードしてはいるのだ。

 

『シービーさんに渡してください!』と、本当は友人宛だった、友人に手渡された手紙を処分したり。

直接渡そうとした子たちをそれとなく邪魔をしたり。

あくまでさりげなく。

ほんの少しだけ、こちら側に意識を逸らす程度に留めている。

 

「あー、そうだ!今度一緒に出かけようよ!」

「いいよ。どこに行こうか」

「えっとね〜、」

 

明るい表情を作りながら、目は嗤う。

キミたちにはこんなこと、できないでしょ?と鮮やかに。

けど、

 

「キミはいい友だちだからね、ミスター」

「……そう、だね」





Mr.CB:
ミスターシービー。
何歩かリードしているがまだまだ。
シレッと僕の横について牽制するけど僕にはただの良い友人としか見られていないすがた。
僕の知らぬところで目が怖くなってる…。
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