さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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誰もが手を叩いて、


望まれる主役劇

"チカラ"を手にした悪魔が微笑む。

善良な者などソコにはおらず、誰も彼もがその"チカラ"を欲して、"チカラ"を以て悪魔を超えようとする。

 

かつて或る鬼才が綴った道のりを、ひとつ覚えになぞっては、それが凡人にはできないものだと気づかずに潰えて夢に堕ちる。

 

誰もが手を鳴らす。

かつて見た『夢』をまた見たいと無邪気に、されど醜悪に。

ソコに至ることさえ出来れば夢は現実になる!なんて砂糖吐くほどの甘い甘言で。

みんな騙される。

誰かに、それとも自分自身に。

騙さなくちゃ、繕わなくちゃやってられないと、バカのフリ。

そりゃあ『憧れ』って、()を目指しているものですから。

 

一秒でも脚止めちゃ置いていかれて。

一回休みなんざしたらもう周回遅れで。

ゆっくりひと息つく間もなく、ひっちゃかめっちゃか物狂いに。

見る情景はさほど変わりはしないのに、有る人・時代は目まぐるしく。

だからこそ急ぐ。

往きて、急ぐ。

フィルムの一場面ひとつも垣間見る暇もないように、希望も失望も渇望も絶望も、…全部一緒くたに。

 

古いビデオの中の"主役"に憧れた、そんな子ども時代を胸に。

大人になって、苦いも辛いも簡単に舌鼓を打てるようになってしまった自身に思わず笑ってしまうように。

酸いも甘いも似たようなものだ。

腹の中に落ちればみんな同じなのだから。

 

何度も舐め回されたモノは無味乾燥に。

ありがちな賞賛を向けなければ、後ろ指さされるように。

大衆心理ほど怖いものはなく、また思い込みほど強いものはない。

怖い話が次から次へと噂を呼んで、恐くなっていくのだとしたら。

それは"補強"以外の何物でもなく。

だからきっと、人は物語を求めるのだ。

 

───だってそうだろう?

喜劇であれ、悲劇であれ、人は物語を好む。

心を震わせて、そして感動する。

涙を流すこともあるかもしれないし、鼻水垂らすことも多々あるかもだけど。

……それでもやっぱり、最後には糧にするんだろう?

どんな形であれ、その人の心に何かを残すから。

消費して、血肉にして。

その時に、ちょっとした痛みはあるかもしれないけれど。

それでも結局は笑い話だ。

 

「"不運は人物を作り、幸運は怪物を作る"───というけれど、それなら僕はどっちなんだろうねぇ」

 

呵呵大笑。

自身がヒーローなのか、悪魔なのか、もうそんなのどうでもいい。

どうせ己の歩く道すべてが舞台端だというのなら、魅せられるのも、無理はないと。

ナルシシスティックだなぁ、と我ながら考えながらも笑みは崩れず。

 

「じゃあ、せいぜい楽しませてね」





"主役":
チカラを有した悪魔であり、立つところすべてが舞台端となる役者。
語り継がれる名作の主であり、何度もリブート・リメイクされる誰か。
でも大概の作品は初代が一番面白いんだよなぁ…。
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