さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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舞台の裏。



壊したくても、壊せない。

【はじまり】は、ガラクタみたいなモンだった。

誰もがバカにするような、そんな。

立派とはいえない、みすぼらしいモノ。

誰かの願いを、何とか形にしきったモノ。

見出されたのは奇跡と呼ぶか、必然と呼ぶか。

ほんの一瞬煌めくように、そして消えてしまった【はじまり】に誰もが涙を流して。

ギラギラと光るスポットライトに照らされながら、ふと視た【はじまり】に手を伸ばして。

 

【はじまり】のようにはなれやしない。

あるのは最高傑作だった【はじまり】の、二番煎じにも満たないレプリカ。

だって僕らが見ることのできた【はじまり】は、ずっと画面越しの擦り切ればかりだったものだから。

擦り切れに、成ろうとして綺麗になれるわけなど…。

 

足りないのはなんだった?

そうは聞いてみても返されたのは言葉もなく視線だけ。

…初めから知っていたけど、知らないふりをしていたかった。

所詮、誰ひとりとして【本物】にはなれないんだってことを。

でもね。

まだ、こびりついてるの。

あの日見た、夢が。

こそぎ落とそうとしてもこそぎ落とせなくて。

忘れようと思っても忘れられなくて。

だから今日も繰り返す。

繰り返し続ける。

 

「ぁ、」

 

ほらまた、始まるよ。

 

 

眺め続けられた映像はもうボロボロで。

昨今ビデオテープなんてもう死語だろうと内心思いながら頬杖ついてだらしなく見る。

画質の悪い映像。

粗い音。

けれどその向こうにいるのは紛れもない…だと知っている。

 

「……あー」

 

意味のない声を出してみる。

何の意味もなかったようですぐに虚しくなって止めた。

 

『───────!!』

 

聞かなくても、聞き慣れすぎて。

やろうと思えば諳んじることすらできるようになった、分かりきったソレ。

今となっても見続けられるソレはまるでミームのような。

"呪い"のような。

 

「…………」

 

低い音を立てて、出てきたビデオテープを掴む。

元々書かれてあった言葉もインキが消えて、日に焼けて薄くなっていた。

古いプラスチックの感触。

少し力をかけるだけで壊れてしまいそうなモノが多くの誰彼にとっては『大切で大切で仕方のないモノ』だというのだから笑える。

 

「もう、映像も音もカスカスなクセして」

 

寿命なんて遠にだろう。

床に置いたソレは、内容しているモノと比べると嫌に弱々しく思えて。

 

───解放してやりたい。

 

そう、思うのに。

 

「なんで、」

 

踏みつけるのも、叩きつけるのも。

やろうとするのを…躊躇してしまって。

理性はそうしようというのに、本能が行動を止める。

 

「…ハ。結局、俺も」

 





月の光のようにボヤけているのに。
そんな姿に、夢を見ている。
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