さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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これは母から引き継いだサガなのか。
それとも…?



ただ月は浮かぶばかりなり

「モテてんなぁ」

「…なんスか」

「さっきの子、慰められてたぜ」

「…」

 

そう言って、【金色旅程】は目の前の可愛がっている後輩を見やる。

初対面は少し怖いけれど、関わればその面倒見の良さとかあれやこれやが見られるようになるこのウマは案外モテていたりする。

まぁコイツの同輩らはだいたい固まって行動しているからそういうことを呼び出して言い難いっていうのもあるんだろうけど。

 

「『俺みたいなヤツに、惚れちゃダメ』ねぇ…」

「最初からいました?」

「さァ?」

 

聞き慣れた、毎度の断り文句。

"それ"を聞くと、みんな引き下がる。だってそうだろ?

いつも毅然にしている奴が眉下げて、ひどく寂しそうにそう言うモンだから。

どうにも、()()()()()()()()()()って気分にされる。

……そんなもん、ただの錯覚だけどよ。

 

「お前さんも罪作りだねェ」

「何のことっすか」

「別にィ~?」

 

俺の言葉を理解できないのか首を傾げる後輩を見て笑う。

あーあ、ホントこいつは厄介だよ。

お前は、()()()()()()んだ。

あんな言葉では引き下がらなくて。

引き下がらないままに、一心に。

()()()()()()()と、言ってもらいたい。

それを自覚してないあたり、本当に質が悪いと思うわけで。

 

(……でもま)

 

それでも、俺はこいつを応援するつもりはないのだ。

だって、面白くないだろう?

こんないいヤツを、そんな言葉ひとつで()()()()なんて。

 

「…………先輩?」

「なんでもねェよ。ほれ、行くぞ」

「ういっす」

 

不思議そうな顔の後輩を連れて歩き出す。

 

「お前には、多少強引な方がいいのかもな」

「なんの話ッスか!?」

 

 

これだけ、こうやって想いを告げられていれば次に来る行動も分かるというもので。

 

(あ、泣く…)

 

思わず、きょうだいにするように涙を指で拭おうとしたけれど止める。

 

『与え過ぎる飴は、過ぎたる毒なのよ』

 

無垢でありながら蠱惑に。

遠いむかし、自分に忠告のごとく、そう語ってみせた母の言葉を思い出す。

円滑な日常を過ごすためには、時には突き放すことも大切なのだ、と。

だから、その背が走り去っていくのを見送った。

これで良かったはずなのに。

どうしてだろう。

胸の奥底にある何かが軋んで悲鳴を上げている気がする。

 

『けれど、ヤっちゃん。あなたは…』

 

やさしい母の声。

でもあの人はやさしいだけじゃなかった。

やさしいけど、無自覚に他人をコロコロ手のひらの上で転がしてはニコニコと微笑んでいるような人だった。

世が世なら教祖とか大きなひとつの国を傾けてそうなくらいに。

 

「…修羅場にだけは、ならねぇようにしねぇと……」





【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。幼名:ヤツドキ。
意外と告白されている。
けれどいつも断っている。
がしかし、断っても断っても食らいついてくれる相手ならOKするかも…?

【金色旅程】:
【銀色の王者】の先輩。
後方なに面になるんですかねこの場合。
でもまぁ取り敢えず内心で周りを煽っているのは確か。
それに上手い具合に牽制入れたりしている。
…コイツは、俺が可愛がってんだからさァ。な?
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