さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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あなたが───。



僕にとっては、

「お父さん」

 

僕にとって『父』というものはあの人だった。

血は繋がらなかったけれど、育ての親であり、師であり、恩人だった。

だから僕はお父さんの言いつけを破ったことはないし、お父さんが僕に何かを強制したこともない。

 

「お父さん」

 

昔から僕の頭をよく撫でてくれた。

畑にいる虫を恐れて泣けば、ひょいっと遠くにやってくれて。

雷が怖くて布団の中に入り込めば、眠るまで枕元で物語を語ってくれた。

風邪を引いた時は慣れない手つきで看病してくれたし、誕生日には肩車をしてバカみたいにはしゃいでくれた。

そう考えると、──生みの父親である"あの人"よりも、ずっと父親らしいじゃないか。

でも、

 

「俺は、お前の父親じゃないよ」

 

『父』と貴方を慕うたびに、貴方はそう言って。

 

「ただの、代わりだ」

 

そう言って僕の頭をやさしく撫でる。

その目にはどこか後悔の念があって、罪滅ぼしのような、そんな色があって。

それが僕には、何よりも悲しかった。

 

「だから、──もう『父さん』なんて呼ぶな」

 

それは僕がまだ十にも満たないころの話である。

 

 

"あの人"こと、僕の生みの父親はとても忙しい人であった。

母からしても僕の近況をたびたび送っているというがそれに返答があったとは聞かないし、元よりわざわざ表舞台に立つというような人でもないらしい。

でも、

 

『お父様そっくりですね』

 

僕の容姿は。

"あの人"を知っている人なら目を見開くぐらいにそっくりだと。

会ったこともないのに、そっくりだと。

 

「────」

 

そんな話を人々から聞いて、僕はなんだか複雑な気分になった。

確かに生みの父親ではあるけれど知らない人なのだ。

僕の傍にいる『父』はお父さんだ。

だから、似ていると言われるなら上の姉さんたちみたいに母似って言われたかった。

 

「…、」

「むくれるなよ」

「だって、お父さん…"あの人"のことあまり好きじゃないでしょう?」

「好きじゃないって…まぁ、仕方の無いことだとは」

「…むぅ」

 

お父さんとお母さんは相思相愛だから。

だから、お父さんはお母さんのことしか見ていないし、お母さんもお父さんのことを愛している。

そんな二人の間に育てられた僕は、やっぱり"あの人"のことを好きになれなかった。

 

「でも、」

「?」

「お前が"あの人"に似ていてよかったよ」

「……なんで?」

「──お前は、」

「……お父さん?」

「いや、何でもない」

 

ポン、とお父さんが頭を撫でる。

でもいつもみたいにワシャワシャ!って感じじゃなくて。

ただ、手を乗せただけ…みたいな。

 

「…?」





【戦う者】:
サンデースクラッパ。
容姿は父似。
でも本人が慕っているのは育ての父親。

だが育ての父親からすると、その無邪気さが、その走りが大切に大切に、愛していた、"あの子"に────。
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