さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

515 / 1416

たぶん仲は良いんだけどそれは友だちとしての仲が良いじゃなくて、同じアスリートとしての『仲がいい』って感じ。
だから互いに好きなものとか知らない。
知っているのはレースに関してのことだけ…的な。



ふたりだけ

目を覚ますと、友人がコーヒーを淹れていた。

自分がよく淹れるようなスーパーで売っている感じのものではなく、ちゃんとミルで挽いて淹れたものらしい。

 

「…飲む?」

「ん」

 

昨日は、雨に降られた。

ちょうどトレーニングも休みだからと新生活を始めた友人に祝いとしてプレゼントを持参していったらコレだ。

駅へ向かおうにも大雨に次ぐ大雨だったので泊まっていきなよ、と。

 

「まだ、降ってるね」

「…うん」

 

小雨になったら、出ていくと言ったはいいけれど。

天気予報を見るに、このままの勢いで降り続くだろう雨は今や雷を伴っている。

どうしたものかなぁと思っているうちに昼近くになってしまったわけだが。

 

「「……」」

 

沈黙が気まずいわけではない。

ただなんというのか、この空気感をどうすればいいのか分からないだけで。

確かに友人とは仲がいい、もしくはよかったという自負はあるが大抵が周りにクラスメイトがいたりだとか、ふたりきりでも併走した後でアドレナリンドパドパだったとかで素面の時がなかった。

 

(レースのこと以外でなに話せばいいんだろ…?)

 

思えば趣味の話とか全然したことなかったな?

するとすれば、この前のレースがどうだったとか、自分ならこう走るとか、まさにレースバカ!としか言いようがない話しかしてこなかった気がする。

 

「あのさ」

「€*々!」

 

急に声をかけられて思わず声が裏返ってしまった。

恥ずかしさに顔から火が出そうになりながら友人の方を見れば、苦笑していた。

 

「そんな緊張しなくてもいいよ」

「あー……ごめん」

「謝ることないって。キミと僕の仲なんだから」

「そ、うだよね…」

 

 

僕に会いに来た、とキミが高らかに玄関で叫んだ時、その声が高らかすぎて僕含め建物の中にいた人は全員ザワついていたと思う。

なんてったってキミは先輩に可愛がられやすくて。

僕がエントランスに着いた頃にはもう既に先輩方に囲まれ、服のポケットというポケットをお菓子でパンパンに膨らませていたのだから手に負えない。

 

「へ〜、こんな場所なんだね」

「…キミも、いつかはここで暮らすことになると思うけど」

「え〜?ないない!」

 

ふわふわと笑う姿に、黒いところなぞなくて。

その真っ白で、仕方のない部分を見るたびに心がザワつく。

それはまるで真っ白な大きな紙を与えられた子どものころのような。

 

「…どうしたの?」

 

綺麗な紙を丸めたとして。

丸めたものを開いても、それは同じ紙とは言えないなら。

皺がついて、折り目がついて。

誰も、見向きしなくなったソレを……。

 

「…なんでもないよ」

「ほんとう?」

「本当だよ」

「嘘じゃない?」

「本当に」

「じゃあ、いっか」





ふたり:
シルバープレアーと【英雄】。
走るの大好き!
でも走ること以外の互いのことは何も知らねぇ!
けど『走る』という本能の部分で触れ合ってる…みたいなとこあるからお互い変に深いところを知ってそう。
自分でもよく分かってないところとか。
それで周りに「エッ?」ってドン引きとか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。