押せ押せ!
その日、グローリーゴアは雷に撃たれた。
いや、雷に撃たれた(物理)ではなく、雷に撃たれた(比喩)だが。
「…???」
グローリーゴアはまぁ傍から見れば完璧なウマである。
家柄よし、文武両道、マスコミの対応だって当たり障りなく、しかし確実に好感度を稼いでいる。
生徒からも先生からも信頼厚い誰からも好かれる…そんなウマであった。が、
「…、」
思わず握り締めた胸元、その奥の心臓がバクバクと高鳴る。
そこから顔に熱が集まっていくのが分かって、思わず口元を手で覆ってしまう。
(な、なんだこれは……!?)
初めて感じるその感覚に困惑するグローリーゴア。
しかしそれも仕方ないだろう。
だってそれは、生まれて初めての"執着"なのだから!
(…あの目に、映ることができたらどれほどか)
グローリーゴアは今までの人生でそんな感覚を感じたことがなかった。
いや、正確には"知らなかったこと"にすら
家柄も良くて、文武両道で、生徒からも先生からも好かれる完璧なウマである一方、何事にも執着がなく、来る者拒まず去るもの追わずだったグローリーゴアは───。
「…」
その日、
*
「これは僕が選んだ道だ。だから後悔なんてない。どれほど多大な期待だろうが、たとえドン底まで失望されようが…どうなったって、僕は僕だ」
「ぁ、ぅ…」
ドッドッドッ、と激しく高鳴る鼓動ははたしてどちらのモノだろう。
自分をヒシ、と閉じ込める腕の力強さに逃げる気もゆるやかに殺されていく。
「だから、」
「……っ!」
「キミが心配することは何もないから……ただ、僕の隣に……」
耳元で囁かれるその声があまりにも優しくて、思わずクラッとキそうになる。
──だが、しかし!
(うぉおおおお!!)
まだだ!まだ早い!ここで屈しちゃダメ!!とサンデースクラッパの理性が叫ぶ!!
(そ、そうだ……冷静になれ僕……!いくらグローリーの顔と声と性格と…その他諸々丸々引っ括めてが良いとはいえ、相手は良家!しかも年下ァ!!)
そう、たとえ相手がどんな美丈夫だろうが、例えどんなハイスペックなウマだろうが……サンデースクラッパは先輩。
そして今はその立場を弁えねばならない時だ。
(落ち着け僕……!大丈夫、僕はまだ冷静だ……うん、冷静になれ僕!)
(よ、よし!まずはこの拘束から抜け出そう……!話はそれから……ってあれ?なんか思ったより強くない??)
「…スク?」
「ヒエッ」
「ねぇ、どこに行くつもり?」
ぽそぽそ、と耳元で呟く姿は愛らしいが、語りかけるその声の低さは甘く、どろりと。
「スク、僕はキミに聞いてるんだよ」
「ぼ、僕は……別に……」
「ふぅん?」
ゾワリ、と背筋に走った悪寒。
それは恐怖か、それとも別の何かなのか。
そんなことを考える余裕もなく、サンデースクラッパはただただその腕の中から逃れようと必死に藻掻くが……しかし相手が悪すぎる。
「……ねぇ、スク?」
(ヒィイイ!?)
する、と頬が撫でられるのに思わず固まるサンデースクラッパ。
「僕はキミがいいんだ」
「う、ぁ……」
真摯な目に小さく声が漏れる。
(だ、ダメだ……これは……!)
しかしそれでもなお抵抗をやめないサンデースクラッパにグローリーは一度拘束を解き、改めて正面から向かい合う。
そしてそのままゆっくりと腕を広げると、まるで壊れ物を扱うかのような手つきで再び抱きしめたのだった。
「だからどうかお願い。……僕のそばに、いてくれないか?」
「、」
───サンデースクラッパは思う。
(助けて
【栄光を往く者】:
グローリーゴア。
物語の主人公みたいに完璧だが、【戦う者】と出会って以来、対【戦う者】限定でポンコツに。
でも「自分の選んだ道だから周りからどう言われようが後悔はない」に代表されるようにまぁメンタル強者。
たぶんどれだけアンチに言葉の刃を向けられようが正論パンチ叩きつけるタイプ。
【戦う者】:
サンデースクラッパ。
面食い。
【栄光を往く者】に迫られるのはまぁ…満更でもない、かも?
実は案外"偉大なる背"関係でメンタルガタガタ。
どれだけ頑張っても指先ひとつ掠らない"背"に…ね?
だからその"背"を忘れるぐらいに、どうか。