さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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前に書いたL'Arcローテ√を辿った【戦う者】軸であるウマとの話。
…そう言えばこの方とだけ一族は絡んでなかったなって。



待っていたの

ナリタブライアンにとって、そのウマはどうしようもなく鮮烈だった。

鮮烈過ぎて、その顔が茫洋で、あるのはただ縦横無尽にひとり歩きするような周りの評価だけ。

 

───入学直後に【皇帝】と【ターフの演出家】から声をかけられた、とか。

───最強、だとか。

───絶対王者、だとか。

───"かのウマ"の生まれ変わり、だとか。

 

"かのウマ"──そう称される者のことを、もちろんナリタブライアンも知っていた。

『戦ってみたかった』。

そう、思ったことがないと言えば嘘になる。

かつて、幼い頃、記録映像としてテレビの画面越しに見たその眼差しは前だけを見据えていて。

その走りはどこまでも。

雑念なぞ一変もない、ただ()()()()を追い求める───。

……綺麗だった。

思わず畏怖を覚えるほど、美しかった。

だから、その走りを見たいと、思った。

自分の走りでそれに並びたいと、願った。

願って、いた。

───それが()()()()だと知っても。

そして──ナリタブライアンは出会ったのだ。

 

「──────」

 

その日もナリタブライアンは走っていた。

走るのが好きだからとか、そんな理由ではない。

ただ単に、そうするしかなかったからだった。

『走れ』とは誰からも言われなかったが、魂がそう告げていたから。

普段からは考えられない熱気に包まれた体は、まるで誰かを待ちわびるようで。

()()()()』と猛り叫ぶ本能を、ナリタブライアンは必死に抑え込んでいた。

だから──その影が自分をサラリと抜いていった時、ナリタブライアンの体は弾かれたように動いていた。

 

「──────」

 

自然と口角がつり上がるのを感じる。

それがどんな感情から来るものなのか、自分でもゴチャゴチャしすぎて分からなかったが。

ただ、この出会いは必然だと思えた。

ああ、ようやくだ───やっときたか!

そう歓迎する自分すらいて……それはつまり自分が()()()()を待ち望んでいたのだと気付いた瞬間だった。

 

「ぁ、えと…たしか」

「ナリタブライアンだ」

「あぁ、…そうだそうだ。ナリタブライアン先輩。ルドルフさんから、話は時々…」

「帰ってきたのか」

「まぁ…、取材陣に囲まれるの見越して秘密裏にですケド。あ、」

 

立ち止まって何となしに会話をする。

名乗らなければきっと顔と名前が一致しなかったのだろうその姿は本人のストイックさ故か、それとも。

 

「僕の名前は───サンデースクラッパです」

 

サラリと髪が風に揺れる。

知っている、とは口にしなかった。

ただ、『やっと会えた』『()()()()』という歓喜だけが……。





【影をも恐れぬ怪物】:
ナリタブライアン。
1995JCのたった一度しか相見えなかったが、そのたった一度で焼き付いた。
圧倒的な走りを魅せる【戦う者】に『全身全霊で戦いたい』という想いがずっと。
まぁそれには【戦う者】に縁ある"かのウマ"の影響も…?
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