自惚れるなよ。
「…そんなに、僕が欲しいの?」
「えぇ、」
「そう」
同期周辺では有名な話ではあるが。
【皇帝】シンボリルドルフは僕-シルバーバレットに熱烈に執着している。
そりゃあシンボリ家という家からしてみれば凱旋門賞を勝利したウマ娘(後にトレーナー志望)なんて優良物件もいいところだろう。
けれど、僕としてはそんなのはごめんだ。
「すまないがキミの気持ちには応えられない」
「……理由を聞いても?」
「僕、家継がなきゃいけないんだよ。んでトレーナーになりたいって言っても本気のヤツじゃない、ちっちゃい子たちに教えるぐらいの、こう…民間のボランティアみたいなさぁ」
「それは、」
「僕がトレーナーになるってなったらそれこそ本当にみんなが僕のところに来ちゃうでしょ?僕そういうのは嫌なんだ」
だからごめんね。と僕はシンボリルドルフの勧誘を断る。
……というかこの子まだ学生だよね?
なんでもう先々の話を詰めようとしてるの……?
怖いよ……。
「でも私は諦めませんから」
「……えぇ、」
*
どれほどの好条件で誘っても、また自分の主義には反するが言いくるめようとしても、彼女-シルバーバレットはいつだって求めるその手からするりと逃げていく。
『魅惑のささやき』も『独占力』も『八方にらみ』も、その全てが意味なぞないとばかりに微笑む彼女は、ただ一方的に【皇帝】という名の獅子を撃ち抜くばかり───。
「…堪らないな、貴女は」
「【皇帝】サマは冗談がお得意で」
「本気なんだがなぁ」
「……そう。でも、僕なんかよりもっといい人いるよ」
「貴女が、いいんですよ」
何度となく繰り返した会話も、もう慣れてしまった。
あぁ、早くここまできてくれないか。
だって、ズルいじゃないか。
自分は撃ち抜くだけ撃ち抜かれてまるで蜂の巣なのに。
目の前にいる貴女は傷ひとつなく、それでいて美しい。
「ねぇ、シルバーバレット」
「なに?」
「……貴女は、私のモノだ」
あぁ、早くここまで堕ちてきてくれないか。
そうしたらきっと……貴女のすべてを
(彼女が欲しい)
(彼女を自分のモノにしたい)
(彼女の全てが見たい)
(彼女の全てが欲しい)
(私だけのモノであってくれ)
(他のヤツには渡さない)
そんな欲望がぐるぐると頭の中を駆け巡る。
瞳孔がきゅう、と獲物を見定めた獣のようになるのを自覚しながら、
「ダメだよ、ルドルフ」
そう言って、唇に当てられた人差し指。
「いい子だから」
伸ばされた手がゆるりと頭を撫でる。
「…ね?」
【皇帝】:
シンボリルドルフ。
撃ち抜かれまくっているけど、自分を撃ち抜く凶弾に焦がれてやまない姿。
どれほど熱烈に乞うても微笑むだけで明確な答えをくれないあの子にグルル…と唸ったり。
でも焦がれちゃったからね、仕方ないね。