さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ぎゅっ!



そばにいるのさ

メジロマックイーンの肩は、時々重くなる。

特段、肩こりになるようなことをした覚えはないのだが…どこかずしりとした重さを感じることがある。

しかし、その重さが何であるかは……メジロマックイーンには分からないのだった。

 

「あ、」

 

だがしかし。

 

「こんにちは、マックちゃん」

 

自身のことを"マックちゃん"──そう気軽に呼ぶ彼女-シルバーバレットには肩の重さの原因が分かっているようで。

 

「ん、これでだいぶ楽になるんじゃないかなぁ?」

「そ、そうですか」

「マックちゃん、もうすぐレースだものねぇ。肩こりとはいっても体の不調はない方がいいだろうし」

「ええ、そうですわね」

 

メジロマックイーンがシルバーバレットに肩の重みを相談したのは……もう随分と前のことだ。

それは、シルバーバレットと出会うキッカケにもなったのだが…。

ともかく、メジロマックイーンはいつしか自分の肩の重りの原因を彼女に相談するようになっていたのだ。

 

「マックちゃんの肩こりはねぇ」

「はい」

「きっとね〜、…うん、まあ……悪いことはないさ」

 

しかし、その理由だけは分からないままであった。

ある程度は打てば響く問答をしてくれるシルバーバレットではあるが、この件に関しては……何故か歯切れが悪くなる。

 

「シルバーバレットさん?」

「うん? ああ、いや……マックちゃんの肩こりは悪いものじゃないよ」

「……そう、ですのね」

 

メジロマックイーンが肩の重さを感じる時、何故か人に避けられやすくなる。

そんな状況で唯一自身に話しかけ、その肩の重みを"悪いものではない"と断言してくれることに安堵を覚えつつ……同時にほんの少し寂しさも感じるメジロマックイーンであった。

 

 

「…キミがマックちゃんに懐いてるのは知ってるけどさぁ」

 

そうボヤくシルバーバレットの肩は…少し重い。

チラ、と目線だけで肩口を見れば【影】がするりと後ろから抱き着くように。

 

「ホント、懐かない猫なのか滅茶苦茶懐く犬なのかどっちなんだか…」

 

ケラケラ、と笑う【影】の頭をゆるく撫でてやりながらシルバーバレットは苦笑する。

 

「キミ、自分がどっちって自覚ある?」

 

そう問えば【影】はこてりと首を傾げる。

その動作がまさに猫のようであるとシルバーバレットは小さく笑う。

 

「まあ、どっちでもいいんだけどねぇ」

 

そう言いながら……また前へと視線をやったのだった。

シルバーバレットにとってその【影】はこの学園においては、視えて当然のモノであった。

トレセン学園自体が正負ごちゃ混ぜの念の坩堝であるため、"ソウイウモノ"がいても『あぁ、またいるな』と何となく認識して無視する程度。

しかし、シルバーバレットがメジロマックイーンを視て、関わりを持つようになってからは……その頻度が上がった。

それはつまり、【影】を何故だか無視できなかったから。

そして【影】のことは視えて、ついでに懐かれているものの、その正体については全く知らないというのがシルバーバレットの現状だ。

 

(まあ、マックちゃんに危害を加えようという気はないみたいだしねぇ)

 

肩に乗る【影】の頭をゆるく撫でればすり寄ってくるのだから随分と人懐っこい。

こうやって形をしっかり取っているから、と初めは警戒したものだが……。

 

「キミは何なんだろうねぇ」

 

そう問いかけても【影】はこてりと首を傾げるだけ。

"答え"を話すことはない。

 

(まあ、普段は学園中をふわふわしてるだけみたいだし)

 

なら良しとするか、とシルバーバレットは思うことにしたのだった。

 





【影】:
よくマックちゃんをぎゅっとしている。
そこから銀弾に移ることもしばしば。
"ソウイウモノ"が多いトレセン学園において、確固とした形を持つナニカ。
故にチカラが強いが生徒に危害を加える気はない穏健派。
……ホントにに穏健派ですか?(悪いタイプのソウイウモノをシバく姿を見ながら)
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