たぶん
…周囲からはでした。さん枠に見られてるのに、ねぇ?
その牝馬は、生まれながらにして恐れられた。
彼女の母も、まぁ気性が荒かったがそれに輪を何重もかけるほどに荒く。
目に入るもの何もかもに喧嘩を売り、果てには一方的にこちらをブチ…、常に命の危機に晒されていたと後年語る程度には手に負えなかった。
がしかし。
「はじめまして、可憐なお姫様」
『運命の相手』に、出会った結果──?
*
その年、白峰
「はじめまして、可憐なお姫様」
一目見て、『なるほど』と思った。
まだデビュー前であれど、この体格で暴れられればひとたまりもないと。
気の立っている彼女に本気で噛まれても、本気で襲うぞと追い詰められて「こんな美人に襲われるなんて男冥利に尽きるな!」などと笑顔で言い放ち、『なんやコイツ…』とドン引きさせていた調教師兼ウチの父は置いておいて。
(まぁ、美人ではあるよな…)
叶は目の前の彼女を見つめる。
近い未来美しい芦毛になるだろう毛並みに、その黒黒とした目はよく栄えた。
これほど完璧な牝馬は見たことがないと若輩者ながら感嘆してしまう。
「はじめまして、お姫さん」
しかしまぁ、気性が荒いのは事実のようで。
彼女はこちらを睨みつけたまま、ドンと威嚇するように足を鳴らした。
・
・
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オゥジーザスという馬がいる。
かの11冠馬シロガネガイセイの初年度産駒の一頭であり、その代表産駒としてきっといつまでも語られるだろう牝馬。
その名前の由来は彼女のあまりにも荒い気性から。
もはや怒りがこちらに向かぬよう、祈ることしかできない有り様から、『オゥジーザス』と。
その気性の荒さは父譲りか、デビュー前から既に同厩舎の馬に噛みつきに噛みつき、恐れさせていた。
しかしまぁ、不思議なもので。
彼女はそんな気性の荒さとは裏腹に非常に強い馬であったのだ。
デビュー戦こそ勝ったはいいものの大暴走…という結果だったが、それ以降は何とか折り合いをつけ始め。
『オゥジーザス!父シロガネガイセイの記録には届きませんでしたが見事有終の美!無敗の10冠で引退ですッ!!』
『そして2着は今回もディバインプリンス…』
ファンからは『生物学上は牝馬』やら『暴走特急系お嬢様』、『可愛い顔して
無敗で10冠達成し、大団円を遂げた。
それはそれとして。
(凱旋門、行ってみたかったなぁ)
そう思うのは、相棒の欲目か。
───それとも。
恋する乙女は、強いのだ。
【おぉ、神よ!】:
オゥジーザス。
うおっでっか…!
人呼んで『灼熱の三冠(牝)馬』。
シロガネガイセイ初年度産駒。
鞍上は父と同じく白峰
もちろん馬主も白銀さん。
気性は爆荒。だが生涯無敗。
『セントサイモンとかってこんな感じだったのかな…』としみじみされるぐらいには気性がアレ。
でも鞍上となった叶くんに一目惚れしてからは某カワカミさんのような愉快()なお嬢様に。
しかし気性が気性なので海外遠征はムリ!となった。
もし遠征できていたら?もちろん勝ってましたけど。
戦法は大体大逃げで、出遅れたら追込みになる。
主な勝ち鞍:
牝馬三冠.宝塚記念(3.4歳).JC(3.4歳).有馬記念(3.4歳).天皇賞・秋(4歳)
計G1:10勝、グランプリ4連覇達成
ちな自分より前を走っている馬がたくさんいればいるほどガチギレ度合いがひどくなる模様(ゆえの最後方大外ぶん回し追込み劇)。
端的にいうと、自分が先頭じゃなきゃ気に食わない、負けるの絶対ヤダ!という感じらしい。
なお、未来の彼女の子どもたちは当然…アッ(察し)。
白峰
元、【おぉ、神よ!】の父シロガネガイセイの主戦騎手。
だが【おぉ、神よ!】を扱えてしまったが故にこの後も実力は確かだが気性がアレなシロガネガイセイ産駒を託されてしまうことに。
まぁシロガネガイセイ産駒の傾向的に気性が荒ければ荒いほど活躍するみたいなのがあるんで…(それを扱えるかはさておき)。
とはいえどんな気性の荒いシロガネガイセイ産駒も
……その血の運命?
それはそれとして、叶くんはこっから騎手引退までお手馬がだいたいシロガネガイセイ産駒、もしくはその血筋になる運命になった。
中にはシロガネガイセイ産駒じゃないのもいたけど、引退後に気づけばシロガネガイセイの血筋が入って結局縁があったな!になる。
そもそもシロガネガイセイ自体が父としても大活躍しまくってるからね、仕方ないね。
また【おぉ、神よ!】のことは「おひいさま」「姫さん」と呼んでいたとか。