諦めきれない、『恋』を。
…いちおう、ボクも
それは激しい業火だった。
触れただけで焼き尽くされんばかりの激情。
自分のような子どものみならず、大人だって恐れるしかできなかった彼女に、自分は───。
(きれ、い…)
焦がれてしまった。
危険だとは分かっていても、惹かれてやまず。
遠いところから、隔離されている彼女をずっと見ていた。
「───」
だから、すぐに気がついた。
少し成長して、再会した彼女は…とても美しくなっていた。
彼女は自分のことを覚えていない(…というか認識すらしてなかっただろう)けれど、その燃え盛るまでの激しさは、むしろ増していた。
「───」
増していた、から。
惹かれてしまう。
あの頃のように、あの頃以上に。
周りは本能的に彼女を厭うているが、自分にとってはどうしようもなく、彼女は ───。
(きれいだ)
……だから、自分は彼女に近付いた。
少しでも長く彼女を見ていたくて、彼女の近くにいられるように。
「 ───」
それが自分にとっての幸福だった。
……でも、それは間違いだったのかもしれない。
いや、きっと間違っていたのだろう。
だって自分は……彼女に勝つことを
彼女は、綺麗だった。
しかし、危険だった。
故に、触れようとはしなかった。
眺めるだけだった。
誰も近づこうとしないからと、特等席で。
でも。
(───ぁ、)
最後の最後。
彼女が、ターフを去る時。
彼女は笑っていた。
美しく、美しく。
心底───可憐に。
その目に、自分は『恋』を見た。
燃え盛るような彼女の、ほんの一部分。
そして、本心であるやわい場所。
「───」
自分は、それに恋をした。
いや、きっと……それ以前からずっと、彼女に惹かれていたのだろう。
だから、彼女がターフを去る時、自分はようやく理解したのだ。
彼女を『手に入れる』方法を。
(ああ)
ああ、そうだ。
本当に簡単なことだったんだ。
だってそうだろう?
・
・
・
トレセン学園には、ディバインプリンスというウマ娘がいる。
上背もあり、しっかりとした体格の彼女はウマミミと尻尾を上手く隠せば、まさに美丈夫で。
しかも物語の王子様のようにやさしく完璧であるからして学園内でもファンクラブがある始末。
『黄色い声が聞こえる方にディバインプリンスがいる』と称されるくらいには、彼女の人気は高い。
だが。
「おはよう、我がジーザス」
「今日もキミは愛らしい」
「本当に天使のようだ。ボクの心は今日もキミに…」
歯の浮く台詞を今日も今日とて。
けれどそれを向けられた張本人は意に介さず、駆けていく。
───『恋』する、眼差しで。
ディバインプリンスの想いに、気が付かぬ、ままに…。
【神聖なるプリンス】:
ディバインプリンス。
【おぉ、神よ!】のライバル兼同牧場生まれだった。
とりあえず阪神JFやエリ女やヴィクトリアマイルなどの【おぉ、神よ!】が出なかった牝限+NHKマイル.日本ダービーは勝っている(そのためオークスは出ていない)。
なお
まぁプリンスと名付けられたのはその体格と顔立ちから牡馬と間違えられたからなんですが(史実からグッドルッキングホース)(【おぉ、神よ!】より少し大きいぐらい)。
戦法は基本先行、時おり差し。
史実時代から【おぉ、神よ】に惚れ込んではずっとその2着にいた。
【おぉ、神よ!】が一番の壊れなだけで、この子も同世代を鑑みると壊れの部類。
この子と【おぉ、神よ!】と二頭で牝馬最強時代を築いた。
ので、【おぉ、神よ!】にのみ負けるだけで他には圧勝している。
実は【おぉ、神よ!】に惚れていたことに気づくと同時に失恋みたいなことになっている。
気づいた時には遅かった…な感じ。
まぁ、仕方ないね。
でも諦めるつもりは無いんで。
【おぉ、神よ!】:
オゥジーザス。
『灼熱の三冠(牝)馬』。
爆荒気性難娘。
父シロガネガイセイには届かなかったが無敗の10冠で引退しているバケモノ。
ちな基本的には周りに恐れられており、コイツに面と向かってこれるのは同じくらいの気性な同父の馬ばかりだったとか。
たぶん今も昔も【神聖なるプリンス】のことを認識していない。
なにせずっと『恋』をしているので。
あの日、自分を「可憐なお姫様」と呼んでくれた