だが、『絶望』はある。
俗にいう『生まれ変わり』というヤツなのだろう。
四足歩行から二足歩行になった体に、はじめは苦笑したものだったけれど子どもの適応力とはすごいもので、すぐに慣れてしまった。
ただ……。
(走りたい、とは思えないんだよなぁ)
昔なら。
バカみたいに、時間も忘れて走っていただろうに。
何故だか
「そう …」
なので、自分と同じ"かつて"の記憶を持つ人々に説得され、途中編入のためのテストを受けに上京したところ…。
「危ないッ!」
目の前にはフラフラと道路に出ようとしている幼い子ウマ。
そして、それに迫るのは大型トラック。
どこをどうしようとも間に合わないソレに、僕の脚が生まれてこの方見たこともないぐらいに動き…。
・
・
・
言い訳ができるなら、…疲れていたのだと思う。
自分が成せなかった『栄光』に縋る母親から、母親の代替として苛烈なスパルタ教育を受ける日々。
「危ないッ!」
その声のあと、突き飛ばされた体。
地面にろくに受け身も取れず、何がなんだと起き上がると目の前に広がっていたのは…。
「ぁ、ああああああ!?!?!?」
赤い海。
そして…ずっと会いたかったヒトが地面にうつ伏せで横たわる姿。
「あ、あぁ……、あああっ」
それはずっと会いたかったヒトで。
ずっとずっと探していた人で。
「なんで、どうして……っ」
ずっと探していたからこそ、一目で分かった。
この人の『バ生』を、僕が
「いやぁ、無事でよかったよ──ハイセイコ」
後日、病室。
その中でベッドに横たわる貴方の…脚の部分は空白だ。
「まぁこうなっちゃったけどハイセイコが気に病む必要はないからね?運が悪かったってだけさ」
あの日。
あの日、ぼうっとしていた僕を助けた貴方は…両脚を失った。
トレセン学園の編入試験を受けに、ひとり上京していた折のことだったという。
「ハイセイコが救急車とか周りの家の人を呼んでくれたりとかして、助けてくれたから…こうして僕は生きてる。……ありがとうね」
「……」
ごめんなさい、と謝ることも出来ず。
僕はただ、病室の床を見るしかなかった。
(ああ……)
どうしてこうなってしまったのだろう?
貴方に会いたいと思ってしまったから?
貴方にこの生活から救われたいと思ってしまったから?
「う〜ん、それにしてもどうしよう?…あ、選手がムリならトレーナー試験でも受けてみようかな。ハイセイコがいるってことは他の子たちもいるんだろうし!」
"これから"のバ生展望を貴方が語る。
僕の後悔なぞ置き去りにして…。
「今度は世界一のトレーナーに、僕はなるっ!」
僕:
シルバーバレット。
元より『走ること』に対する熱が失せていたので特段気にしていない。
逆に「今度はトレーナーになるかぁ。こうなったらみんな何も言わないだろうし!」とすら思っている。
ちな今回みたく"誰か"の危機を見ると咄嗟に体が動いてしまうのは据え置き。
それが命の危機ならなおさらであり、きっと【銀色のアイドル】じゃなくとも、それが銀系列ではない第三者の一般人であってもコイツは飛び出していた。
…人の心ェ。
【銀色のアイドル】:
シロガネハイセイコ。
救われちゃったねぇ?
一番敬愛する"カミサマ"の(選手)生命をもって…ね?