さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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季節には合わない話ですが書きたかったもので…。



渡す理由

「『ビューティードリームカップ』ってワケでもないクセに…」

 

はァ、とため息を吐く。

目の前には遠き地にいる知人から唐突に送られてきた…勝負服、なのだろう。

見るだけで機能性・強度ともに最高級品なのだと分かる…が。

 

「どういう気持ちで"コレ"送ってきたんだよ」

 

誰もが目を見張るデザインだろう。

しかし、そのデザインがデザインだ。

 

「ウエディングドレス…どこからどう見ても!」

 

真っ黒なドレス。

装飾品から何から何まで黒で、ところどころに薔薇の意匠が組み込まれている。

 

「はァ、」

 

 

「よく似合ってたよ」

『そりゃあどうも!』

 

SNSで流れてきた映像を見て、そう意見を送ると少々御立腹な声が返ってきた。

 

『あんな勝負服送ってきて!…みんなからやいのやいの言われたんだぞ!!』

「…別に、僕は着て走れとは言っていないのだけど」

『なッ、』

「着てくれたらいいな〜とは思っていたけど…ね?」

『…………』

 

今、通話を繋げている相手はグローリーゴアが大切に想っている相手である。

何の奇縁か、今生ではほぼ生まれた頃からの仲だった相手は、"()"では会うことが叶わなかった、かの『偉大なる背』と出会ったことによって元鞘に収まるように現在は日本に行ってしまっているが。

 

『……じゃあ、なんであんなの送ってきたんだよ』

「あー、うん、まあ」

『まあ?』

「…キミ、いつかコッチに戻ってくるだろ?」

『……その、予定ではあるけど』

「うん、ならいいや」

『あ゛?』

 

…誰にも渡したくないのだ。

形振り構わず、こうして牽制してしまうくらいに。

コッチのヤツらはみんな、相手がグローリーゴアの()()だと認識してくれているが、アチラは違う。

あの子は、他人の目を惹きやすい。

 

「似合ってる」

『…そ』

 

 

この勝負服を、古馴染みから贈られたと言えば大半が「すごい」とかそういう褒め言葉をくれたが、極々少数の人は「そっ、か…」とどこか歯切れの悪い返事をした。

 

「?どうかした?」

『いや……なんでもないよ』

「そう……?」

 

似合ってはいる、らしい。

けれど『分かるヤツには分かる、と思う』というデザインであるらしい。

 

「???」

『まぁ、そのうち、分かるんじゃあ…ないかなぁ?』

 

───────

─────

───

 

「あの子は色白だから黒がよく映える」

 

カリカリと、紙面の上をペンが踊る。

 

「あぁ、それと…」

 

迷いなく書き連ねられていく文言はびっしりと。

 

「よし」

 

出来上がった紙面を掲げてウットリする。

まだ提出もしていないのに出来上がりが待ち遠しい…。

 

「さ、次は自分の分を作らないと」





【戦う者】の花嫁勝負服:
もちろん【栄光を往く者】からの贈り物である。
小物含め全身黒に刺繍などで薔薇の意匠が組み込まれているドレス。
分かるやつには分かるやつ。
たぶんホームの会話で匂わせ…じゃなくて嗅がせに来る。

「『あなたはあくまで私のモノ』かぁ。果ては999本で送ってきそうな…あ、なんか胃が痛くなってきた」
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