さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

539 / 1416

そして檻の中に引きずり込まれるんだな。



昔取った杵柄

かの【皇帝】シンボリルドルフの寝起きが悪いことはトップシークレット中のトップシークレットだ。

本人としては『生徒会副会長以上の権限を持つ者しか知らぬ最重要機密』としているらしいが…。

 

「ほら、起きなよルドルフ〜」

「ん゛…」

「がうがうライオン丸〜」

 

弁明させていただくと、僕がこの寝起きの悪さを知っているのは過去、生徒会を手伝っていたことがあったからだ。

まだ現生徒会副会長が入る前、ルドルフ自体がキレたナイフ状態でバチバチだった頃、この子を起こしに行くのはもっぱら僕の仕事であった。

 

「んん……あと5分……」

「もう、しょうがないなぁ」

 

僕はルドルフの布団をひっぺがし、カーテンを開けた。

 

「起きろぉ!!」

 

バサァ!と布団を剥ぐと、そこには寝巻き姿で丸まったまま縮こまっているルドルフの姿があった。

 

「……おはよう、ございます」

「はい、おはようさん」

 

僕がそう言うとルドルフはノロノロとした動きで上半身を起こす。

そしてそのままぼうっと、鋭い目付きでじっと。

やはりエンジンがかかるまでボンヤリする癖は変わらないらしい。

 

「ほら、顔洗ってきな」

「……はい」

 

そう言ってルドルフは洗面所へ向かう。

……にしても相変わらずだな。

いや、普段はああいう分ギャップが凄いと言うべきか?

 

「んしょっと」

 

洗面台の方からの音を聞きつつ朝食の用意をする。

ま、朝食といってもおにぎりとタッパーにおかず詰めてきただけなのだけど。

…流石に、あの状態のルドルフは外にお出しできないからねぇ。

昔起こしに来てた時は毎日してたことだから特に苦でもなし。

 

「さ、食べて食べて!」

 

 

言うなれば、あの頃のルドルフは…トガっていた。

文武共に成績優秀で大人たちからの期待厚く、特段対抗バもいなかったために生徒会長となったが…。

 

「…」

 

シンボリルドルフは、優秀過ぎた。

はじめは前生徒会が用意してくれたサポート役(後に聞くところ、本来ならそのまま副会長になる予定だったらしい)もいたのだが半月も経たない内にいなくなり、そして彼女自身もそれを気にも留めなくなった。

…生徒会が会長である自分ひとりとなっても。

何故なら自分ひとりの方が効率がいいから。

だが。

 

「前生徒会の命により来ましたシルバーバレットです」

 

ただの庶務だよ。

そう言った、あの人だけはルドルフの傍を離れなかった。

幾ら邪魔だと威圧しようが「ごめんね」と謝り、邪魔にならないようこじんまりとして。

果てには「起きなよライオン丸ちゃん」などと起こしに来るまでになり。

 

「ほら、起きて」

「……っ、朝くらいゆっくりさせろ……」

「そんなこと言っても…早く起きないとトレーニングの時間が減るよ?生徒会長様」

「…、」

「わっ!?」

「……寝る」

「えっ、ちょっ、待っ…で、出られない…!」





【皇帝】:
シンボリルドルフ。
現生徒会になるまでは臨時庶務であった僕に手伝ってもらっていた。
初めは僕に対してライオン丸だったが徐々に軟化。
トガってはいるけれど何だかんだ僕の言うことは聞く…ぐらいにはなっていた。
とはいえ、その頃のことは本人にとって黒歴史だったり…?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。