さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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或る型がない、型に囚われないからこそ『強い』、【無法の韋駄天】(ただひたすらに本能で走っている変幻自在戦法で的確に弧線のプロフェッサーキメて、ハヤテ一文字する)と或る子どもの話。



いつか、いつか、実るでしょうか?

「よォ、何処ぞの知らぬ坊ちゃん。匿ってくれや」

 

その日、子どもが出会った男は見た目こそ草臥れていたものの、よくよく見れば身に纏う衣服が高価だろうことや所作からして、ここいらの者ではないことが伺えた。

 

「あ、あの……貴方は?」

「俺か? 俺は──」

 

男は子どもの質問に対して、少し考える素振りを見せた後に答えた。

 

「──ただのどこにでもいる"ウマの骨"さ」

 

それが子どもと男の出会いであり──今でも焼き付いて離れない、"始まり"でもあった。

 

 

自らを『ウマの骨』と宣うその男-自分よりもずっと歳上のウマを子どもが『シロ』と呼び始めるのにそう時間はかからなかった。

普段は染め粉で髪を黒なり茶なりに染めているシロの本来の髪はそれはそれは美しい芦毛であったので。

 

「ヘェ、ガキの癖に速ェな」

 

そんなシロは宿飯のお代に子どもの遊び相手によくなった。

とはいえ、子どもの遊びはもっぱら走ることであったから朝も夜も飽きもせずにシロと二人、駆け回った。

 

「シロ、今日も勝負だ!」

「おうよ」

 

シロは子どもの強請りに文句一つ言わず、それどころかその速さを褒め称えさえした。

 

(……この人は本当に何者なんだろう?)

 

そんな疑問が子どもの中に浮かんだものの、それを聞くことはなかった。

何故なら──、

 

「…そういや、アレも生まれてんだろなァ」

 

聞いたが最後、どこかに消えてしまうんじゃないか。

そう、漠然とした予感…というよりも確信だけが子どもの中にあったから。

 

「"アレ"って?」

 

だから、シロから言わぬ限り何も聞かなかった。

けれどその時だけは問うたのだ。

そんな子どもの内心を知ってか知らずか、シロはニヤリと笑って答えた。

 

「俺のガキ」

 

 

(……懐かしい夢)

 

微睡みに浸りそうに、うつらうつらとしていたところでゆっくりと瞼を開けた存在はそんなことを思った。

あの後、結局シロはその事以外何一つ教えてくれなかったし、自分も何も聞かなかった。

でも大人になるにつれ、己が『シロ』と呼んでいたウマの話は『伝説』として耳に入った。

 

───かの【白の大侠客】の隠し子。

───無敗で、賭け競走(レース)という賭け競走(レース)を荒らし回った白の風来坊、【無法の韋駄天】。

───その強さから追われた後の消息は誰も知れぬまま…。

 

そんな、あまりにも荒唐無稽な話。

()()()は信じていなかったが、今は少しだけ信じている自分がいる。

 

(だって、シロの走り方は──)

 

「どうかしたか?──たずな」

「…いいえ、何も」





昔昔の誰かたち。

【白の狂気】:
ホワイトインセイン。
父である【白の大侠客】の元から飛び出したあと、風来坊していた。
その中で路銀稼ぎの一環として賭け競走(レース)を荒らしに荒らし周り出禁→追われる身に。
そして逃げ込んだ先で出会った子どもの面倒を見つつ、「そういやオレの子どもも生まれてたらこのガキぐらいじゃね?」と我が子(ホワイトバック)のことを思い出したり。
多分世話になった子どもの脳を焼いてるウマ。
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