さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ほら、頑張れ頑張れ♡



お兄ちゃん試験

シルバーバレットには、シルバフォーチュンをはじめに四人の妹がいる。

元より十三人きょうだいの長子であり、ブラコンシスコンをこじらせた…というよりもファミリーコンプレックス、略して『ファミコン』の人間であるからして、弟妹含め家族の幸せを願うのは、もはや本能に近い。

…そんなシルバーバレットには悩みがあった。

 

「僕の可愛い妹たち…みんな絶世の美女なんだよなぁ〜!」

 

いや、家族の贔屓目ではない。

同じく絶世の美女であった母の高身長グラマラスな容姿を引き継いだ妹たちは道行くだけで目を惹く。

シルバーバレットは、そんな妹たちが心配で仕方ないのだ。

しかし、そうは言っても妹たちももういい年頃。

"良いヒト"がいるってのも雑談の端々で察せられるようになったワケだが。

 

「じゃ、コース出なよ」

 

指でクイッ、と指し示す。

長女のシルバフォーチュンの相手はシルバーバレットもよく知っていたから、特段なにもしなかったけれど。

 

「さ、走ろっか」

 

フォーチュンから下の妹の"良いヒト"のことを、シルバーバレットはなにも知らないが故に。

また幼い頃から父母…特に母の、父と出会うまでの色々大変だった話を聞いていたものだから。

 

「ほら、早く入れよ」

 

 

…別に勝たなくたっていいのだ。

シルバーバレットも流石に相手と自分の実力差を理解っている。

そうしてでも見たいのは、

 

『もう一度…お願いします!』

「…うん」

 

ゼェハァ、と今にも倒れそうな相手を見やる。

実力もフィジカルも、諸々すべてが天と地の差。

何度やったとしても結果は大差というのは変わらないだろうし、奇跡なんてない。

しかし、

 

(そう簡単に諦めるヤツがあの子と、なんて)

 

シルバーバレットは知っている。

あの子が、どれだけその"良いヒト"を想っていても…。

 

『……ッ』

「おっと」

 

ふらっと倒れそうになる相手を見て、咄嗟に支える。

 

(……もう限界かな)

 

よくもまぁここまで食い下がれるものだ、と感心するくらいそのウマはシルバーバレットに食らいついてみせた。

 

(でも、そろそろ終わりにしなくちゃね)

 

時間は既に夕暮れをこえて夜の帳がかかり始めたころ。

もう立ち上がる気力もない体をよっ、と抱える。

 

『……シルバーバレットさん』

「なに?」

『ありがとう、ございました』

「……ん」

 

シルバーバレットは今日初めて、"良いヒト"のウマに笑いかけた。

 

 

過保護とか言われるけど。

父さんが母さんにするみたいに一心不乱に守ってくれる人じゃなきゃ任せられないんだよ…。





僕:
シルバーバレット。
クソ強面接官。
だが見る点はただひとつ、根性。
何があってもあの子を求めて、大切にしてくれるだろう人を。
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