さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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求めるモノがあって。



そうしてでも

時々、()()なる。

 

「……」

 

ちゃんと見えて、聞こえるのは風景と環境音と自分を支えてくれるトレーナー含む人たちだけ。

それ以外はとんと、マジックで塗り潰されたみたいに、またはノイズがかって。

何も、何も。

 

「…ぁ、」

 

いつものトレーニングが終わったあと、自主練をしているとぼたり…と垂れてきた鼻血に一時中断。

いつもなら、とっくに戻っている時間なのに戻らないのは、戻ったら耳障りな話し声(ノイズ音)で頭が痛くなるから。

「……」

 

元から自分が、あまり喋る方ではないから"現状"はトレーナー以外にはバレていない。

 

(……、)

 

『あまり無理はしないように』『自主練し終わったあとは念入りにストレッチするように』とだけ、言われている。

言われたとおりに、しているけれど……無理をしているつもりはないのだ。

ただ、自主練を早く切り上げるとノイズが酷くなるから…仕方なく。

 

(……なんで?)

 

どうして? どうしてなの? と、疑問ばかりが頭を占める。

けど、答えなんて出るわけもなくて、また垂れてきた鼻血を手の甲で拭ってトレーニングを再開するためにコースへと戻った…はずが。

 

「は、へ?」

「スク」

「へ…?」

 

聞こえてきた声に、声のする方に向くと、そこには…ひどく怒ったグローリーゴアがいた。

最近、"現状"に至ってからはまったく顔を合わせていなかった存在は惚けた顔をして自分を見あげる僕に眉を顰め。

 

「なに、してるの?」

「…自主練?ぁ、」

 

やば…。

止まらない、鼻血…。

クソ、これならもうちょっと座って休んでた方がよかったかな。

ぼた、ぼたり。

 

「……」

「あ、いや……その」

 

"現状"に至ってから、初めてまともに他人と会話したせいで、頭がまったく回らない。

だからか、グローリーゴアが何を言ったのか分からなかったし、何か言われたのに答えられなかった。

 

(まずい)

 

そう思ったのも束の間、…べろり。

 

「ひっ!?」

「ん、…鉄の味」

「なに舐めてるの!?」

「なにって、キミの鼻血」

「なんで!?」

「だって、……それぐらいしないと止めないだろ?キミ」

 

そう言って、グローリーゴアは僕の鼻の下をやさしく指先で拭う。

次いで「一緒に帰ろうか。『イヤ』って言ったらまた舐めるからね?」と有無を言わせないセリフに僕はもう粛々と従うしかなく…。

 

 

その目の色が、どことなく()()()()()()と気がついたのはサンデースクラッパと顔を合わせなくなって少し経ったころだった。

あまりにも顔を合わせないため『もしかして嫌われた…?』と不安に思っていたら、たまたま門限も過ぎているのにコースで見かけたサンデースクラッパの顔色があまりにも悪くて。

 

「スー?…ッスク!」

 

ぼたぼたと鼻血を出している姿を見てしまえば。

 

「ぁえ、ぐろ、りー…?」

 

焦点の合わない目が自分を見る。

何も映らないくぐもった鏡面のように。

…それが、イヤで。

嫌で、嫌で、嫌で。

 

────べろり。

「ヒッ…!?」

「…あ、ごめん」





【戦う者】:
サンデースクラッパ。
一時的な体調不良。
もしかすると視界の隅に"誰かの背"を捉えているのかもしれない。
でも鼻血を舐められたのには流石にビビった。
その後、一日ゆっくりと監視役の【栄光を往く者】と共に休み、寛解した模様。

【栄光を往く者】:
グローリーゴア。
ある日唐突に【戦う者】から避けられ始めて落ち込んでいた。
そして久しぶりに見かけた【戦う者】がヤベェ状況になっているのに……して無事捕獲。
ちなみに今回の件により【戦う者】の焦点の合っていない目が苦手になったらしい。
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