さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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フラグは折るもの(至言)。



『運命』を知っていた

その言葉を受け取ったのは、真に自分の『運命』を知っていたからに他ならない。

どうせ短い先行きだ、ほんの短い時間であるから…などと。

 

「ホント!?」

 

思ったことを、その眼を見て後悔した。

しかし了承してしまってはどうにもならぬ。

それは、目の前の相手の真摯な気持ちを踏みにじる行為であり、何より自業自得なのだから。

 

(……)

 

 

その手紙が届いたのは、突然だった。

己の気持ちを受け入れてくれたあの子は遠い地で栄光を掴み取り。

もうそろそろ帰国の途についているであろうから、お祝いにどこか遠い場所に旅行だとか、良いところでディナーだとか、そういうことを考えていて。

 

『──この手紙が届いたころには、僕はもうこの世にいないでしょう』

 

そんな言葉から始まる手紙。

最初は何かの冗談だろうと思ったが、続く文面を読み進めるうちにそれが真実であることを悟った。

揺らめいていく筆跡。

涙で濡れて、よれた跡。

 

『キミとは、短い間だったけれど──』

 

"幸せ"と形作られたそこが滲んでいるのを目にした瞬間には、既に泣いていた。

「どうして」も、「なんで」も、届かない。

死人に声は───。

 

「え、えと、ただい、ま…」

 

ガチャ、と湿っぽい空気を切り裂くように。

カラカラというキャリーケースの音と共に気まずそうな声。

振り向くと、そこには頬をかく貴方。

 

「あー……ごめんね?」

 

申し訳なさそうにする貴方に微笑みかける。

そしてそのままゆっくりと歩み寄っていき……。

 

「おかえりなさい!」

 

思いっきり抱きついた。

それはそれとして、…分かっているよね?

 

 

決められていた『運命』が変わったのは、突然だった。

 

"まだソッチに行くべきじゃないだろ?オメーには待ってるヤツがいるんだから。ほら、帰った帰った!"

 

"そちら"へ行こうとしたのに、押し戻されて。

戻る中で自分に手を振る、自分によく似た【白い人々】を見る。

…で、結果。

 

「……分かったよ」

 

相手にあんな手紙を送って、多大なる心配をかけてしまった僕は、何年も経った今になってもそれを盾にしてワガママを押し通される日々を送っている。

 

「機嫌治して、ね?」

 

ただ、足りないものを買いにせいぜい10分くらいしかかからない近くのスーパーに行っていただけというのに。

姿が見えないから、と思わずビクついてしまうほどに連絡を入れて、それで慌てて帰れば泣きじゃくりながらひっつき虫で離れない大切な人に苦笑する。

 

「ずっとキミと一緒にいるよ。忘れたの?」

 

指切りげんまんしたら本当に指取られそうになったあの日を思い出して。

とりあえずは、

 

(…どうにかして、機嫌治さないと)





僕:
シルバーバレット。
『運命』を知っていた。
しかし【白い人々】に追い返されたすがた。
元より親しかった"誰か"と懇意になっている。
しかし、『運命』を知っていた結果、"誰か"に別れの手紙を送ってしまっては多大なるトラウマを植え付けてしまう自業自得…。
でも『運命』を越えたからには一緒にいる、と思うぐらいには"誰か"に情がある模様。
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