さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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強いものは、おそろしい。



変わらないモノ

はじめて会った"そのウマ(ヒト)"は、"あの頃"からキミの目を奪い続けてきた"そのウマ(ヒト)"は、ただぽつねんとしているだけの立ち姿なのに目を離せない光を持っていた。

まるで真っ暗闇の中に突如として差した唯一で、一縷の光源のごとく。

 

───ああ……なんて……。

 

「"綺麗"なんだろう」と、心が震えたのだ。

そして同時に、恐ろしく思った。

だってアレは、()()()()だ。

ヒトには理解できぬ埒外に位置する存在…。

ただウマ(ヒト)というガワを持っているだけで、その中身は()()()()()のだと本能的に察してしまった。

だから近づいちゃいけないと思ったし、関わること自体ダメだとも感じていたのに。

でも……それでも心は、あの日垣間見た『走り』を振り払うことを拒んだ。

この身に触れた突風を拒絶することが出来なかった。

 

『……』

 

そりゃあ、キミも目を奪われるよねって。

分かってしまったからにはもう苦笑するしかない。

キミの目を奪いたいのは今も変わらないのに、()()()を知ってしまった今となっては心にどこか諦めがある。

もし、あの光に魅せられていなかったなら強がりなり何なり言えたかもしれないけど……。

 

───あぁ、いいなぁ。

 

 

そのウマが"そのウマ"だと知らなくても、誰もが目を惹かれて。

いや、見ざるを得ないのだろうと思う。

魂から刻み込まれた"何か"によって、自然とその視線を引き寄せられていくに違いない。

そう思わせるほどに……そのウマは、他の追随を許さない存在感を放っていた。

……しかし、そんな姿を見ていると、ふとした疑問が湧き上がってくる。

「どうして自分はこんなにも惹きつけられるんだろう?」と。

確かにそのウマは学園に通う者たちの中でも見ないくらいに小さ…小柄で、長く伸ばした髪の隙間から火傷跡が見えるが、それを差し引いても人目を惹くとは…。

 

説明できない理由。

いや、もっと根本的な部分で、惹かれる理由があるはずなのだ。

それは一体なんだ?

そのどこに、自分は強く心を揺さぶられているのか?

……分からない。

どれだけ考えても、考えても、考えても、答えが出なかった。

だから結局、自分が何故ここまでそのウマに惹かれてしまうのか分からないままだったのだが……今は違う。

 

『……』

 

ジィ、と見ている。

その走り姿を。

"あの頃"とは()()()()()()けれど、その疾さは『本物』のまま。

きっとコレこそが自分の求め続けていたモノだったんだね。

 

『これが欲しかったんだ…!』

 

そう叫び出したくなる衝動を抑えながら、じっと見つめ続けた。





あるウマ:
ウマソウルにしっかと刻み込まれた存在。
ただそこに在るだけで他人の目を惹いては星のように去っていく。
だが、あるウマ当人は自分のことを『普通』だと思ってるからなぁ……。
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