そして【鯨】の夢を見る。
飛び起きると冷や汗をじっとりかいていた。
横を見るとそこには自分が飛び起きたのに一緒に起こされたのか、「…?」と目を瞬かせながら起きる親友。
「なぁに、ねつけないの…?」
「いや、」
「なにか…つくろうか。おなか、へったし」
繋いだ手は、寝起きだからか熱い。
だが、今はこの熱に安堵を覚えて仕方がない。
それほどまでに、あの【夢】は。
「いつも、ぐっすりなのにねぇ」
軽食はそう時間の経たないうちにできあがった。
甘いピーナッツバターのトーストと、それぞれの好みにあったコーヒー。
僕はブラックで飲むけれど、キミはミルクと砂糖たっぷりだ。
「いただきます」
「はいどうぞー」
さくりとした食感のあとに広がる甘みと香ばしさ。
それに思わず頬が緩む。
「おいしい……」
「よかったー」
ふわりと笑う姿に、ズキリと軋む心。
先ほどの【夢】の余韻。
けれども。
「大丈夫だよ」
───僕は、どこにも行かないから。
*
【夢】を見た。
最悪な【夢】だ。
冷たい身体、動かない身体。
そんな小さな身体がさらわれて。
僕の傍には───誰も。
耐え難い、孤独だった。
そして、目が覚めた時。
隣にいるはずの存在がいないことに気が付いて血の気が引いた。
慌ててベッドから出てリビングに向かう。
そこにいた親友の姿にほっとして力が抜けた。
「あ、おはよう~」
「……何してるの」
「ん?トイレに目が覚めたらそのまま目が冴えちゃって」
伸ばした手が震える。
それを相手も分かっているのか、「大丈夫大丈夫」と努めてやさしく、慈愛のように告げて。
その手に引かれるように抱きしめられる。
伝わる温もりにようやく呼吸ができたような心地になる。
ああ、そうだ。
ここにいるのだ。
ずっと、共に居てくれる人が。
「……ありがとう」
「ううん。気にしないでよ」
ぎゅっと抱き着いて、体を触る。
肉の感覚、熱。
ひとりは、嫌だ。
ひとりは、怖い。
ひとりになると、何もかもが色褪せる。
まるで…モノクロの世界に取り残されるような。
「……いっしょに、二度寝する?」
「そ、れは…」
「僕は構わないけど?」
「じゃあ…」
・
・
・
案外、寂しがりなのだと考える。
起こさぬように撫でた眦は隈で黒くなっていて。
『もうそんな季節だったか』と。
見てのとおり、我が親友はある一定の時期になると不安定になる。
本人が話したがらないので聞き出すことはしないが、十中八九自分が関係しているのだろうと予想はできるので。
「大丈夫だよ」
ここにいるよ、と。
祈るように、また僕はその大きな体に擦り寄った。
【栄光を往く者】:
グローリーゴア。
ずっと一緒だからこそ、
一定の時期に差し掛かると不安になりがち。
なので常に【戦う者】に引っ付いたり、スキンシップを取っているとか。
【戦う者】:
サンデースクラッパ。
詳しいことは分からないが要因に自分が絡んでいることぐらいは察している。
故にその期間中はスキンシップにもあまり口うるさく言わないらしい。