さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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───さ、飲み干して。



遅くなった『答え』

「お店に行こうよ!」

 

そう言われて、『珍しいこともあるものだ』と『本当は行きたくないがキミがそう言うなら』のふたつの気持ちで赴いたのは確かに、さすがキミが選んだ店だと感嘆の息を吐きたくなるぐらいに趣深い店だった。

 

「知る人ぞ知る店ってヤツらしくてね」

「ふぅん」

 

ネオンから遠く。

ただぼんやりと光る街灯と同じように注意して探さなければ見つからないようなその場所は、やはり中もムーディーだった。

 

「いらっしゃいませ」

 

そう言って出迎えてくれたのは初老の男性。

白髪をオールバックにした彼はこの店の店主らしく、席に着くと同時にメニューを手渡される。

 

「ご注文がお決まりでしたらお呼びください」

 

……なるほど。

見回すと自分たち以外には誰もいない。

聞けば不定期に、また店主さんの趣味でやっているに近い店だと言い、「今日は頼んで開けてもらったのだ」と申し訳なさそうにするキミに首を振る店主さんの様子は思った以上に気安い。

 

「あはは、そんなに拗ねないでよ」

「拗ねてない」

「まぁ、グローリーが拗ねても可愛いだけなんだけどね」

「っ……」

 

キミのこの言葉に店主さんは苦笑い。

どうやらキミは、僕が拗ねていると思っているらしい。

……いやまぁ、確かにその通りだけども。

 

「あぁもう悪かったよ!今日は奢るからさ!」

「……はぁ」

 

メニューを見るフリをして顔を背ける僕にキミは謝り続ける。

そんな姿に店主さんはさらに苦笑いを深めて、「ドリンクはもう決まってますので」と告げる。

 

「ワッ!て、ててて、店主さん!!」

「ふふ、すまないね」

「…?」

 

顔が真っ赤になっているキミとは裏腹に店主さんは洗練された動きでカクテルを作っていく。

 

「さ、ご注文の────」

 

 

「…やっぱり酔っ払ったね」

「ごめんね」

「いや、」

 

千鳥足が激しい体をおんぶして。

ふにゃふにゃと今にも眠りそうな吐息を聞きながら、僕はキミの体温を感じる。

 

「……」

 

……まったく。

本当にキミはずるい人だ。

そう思わずにはいられない。

だってそうだろう?

 

「僕にはXYZで、キミはコープスリバイバーか」

 

いつかに贈った999本の黒薔薇の答えのような。

キミが頼んでいたカクテルは、そんなお酒だった。

 

 

…あぁ、頭が痛い。

なんだかとても幸せな夢を見た気がする。

夢の内容は思い出せないけれど、体調はともかく気分はいい。

そんな目覚めだ。

 

「…」

 

なんとなくベッドサイドの時計を見る。

……ふむ?もう9時か。

休日とはいえ少し寝すぎたかもしれないなと反省しながら体を起こして伸びをしようとして。

 

「起きたかい?」

「あ、」

「見るからに二日酔いだろう?」

「ん〜?…あぁ、そう、なの?」

「キミ、普段はそんなに飲まないからね」

 

……あぁ、そうだ。そうだった。

昨日の記憶が徐々に戻ってくる。

昨日はバーに行ったんだ。

そしてそこで頼んだお酒を自分には合わない度数だって知っていたけど飲み干して。

それで店を出てから帰っている途中で頭が痛くなって……それから?

それからの記憶がないな?

うん?

僕は一体どうしたんだっただろうか??

まさかどこかでぶっ倒れて頭でも打ったかなと記憶を遡る僕にキミは苦笑いしながら言う。

 

「キミの気持ちは受け取ったよ」

「…さいで」





XYZ→永遠にあなたのもの
コープスリバイバー→死んでもあなたと
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