置いていきたくない人と、置いていかれた人の話。
「先輩」
そう自らを呼ぶ声を【金色旅程】は好んでいる。
こんな自分を信用していると謳い、こんな自分に助けを求めてくる。
こんな自分を頼りにし、こんな自分を敬愛する。
この【金色旅程】を慕っていると言い張る後輩が、堪らなく愛おしかった。
「先輩」
もう一度、そう呼ばれた。
それに反応して顔を上げれば、目の前には後輩の笑顔があった。
「はい! お届け物です!」
そう言って差し出されたのは美味しそうな菓子。
「時間があって、食べたくなったので」と、お裾分けに渡されたソレを【金色旅程】は受け取った。
「あんがと」
「いえいえ! 先輩の口に合うなら幸いです!」
そんな後輩の笑顔に、【金色旅程】は唇を釣り上げる。
その微笑みが、また後輩の微笑ませ。
互いにこの笑顔が見たくて、この笑顔のために頑張っている気がするとさえ思えるから不思議だ。
「……先輩?」
そう思う【金色旅程】だったが、ふとその表情を曇らせた。
「何か悩み事ですか?」と心配そうにする声に、ちょいちょいと「こっちに来い」のジェスチャーをすれば大人しく隣に座る華奢な体。
「どうしました?…わっ、」
掴んだ体はそこから解けてしまいそうな何かがあり。
それを厭うてもっと強く掴めば、小さな悲鳴の声が上がる。
その声聞き流して、【金色旅程】は後輩の体を引き寄せた。
「せ、先輩?」
「……お前」
「え?」
「……なんでもねぇ」
そう誤魔化しながら、【金色旅程】は後輩に触れる。
そうすれば感じる温もりに安堵し、それと同時に不安になる。
(……コイツを置いて、いなくなる?)
そんな
魂に刻み込まれた
それは、嫌だと思った。
「先輩?」
この後輩が【金色旅程】無しに?
だから、
そう思えば思うほど、不安が募っていく。
(コイツは……)
そんな【金色旅程】の葛藤など知らない後輩は、ただ不思議そうに首を傾げるばかり。
しかしそんな仕草も【金色旅程】の庇護欲を煽るものでしかなくて。
「先輩、どうしました?」
「……なんでもねぇ」
この後輩は【金色旅程】が守らなければならない。
そんな想いと共に、後輩を抱きしめる力を強めたのだった。
*
【金色旅程】さんのことですか?
…えぇ、やさしい先輩でしたよ。
あの人、案外面倒見はいいので。
よくしてもらってました。
けど、
─────まさかあの人の方が、ね。
【白の一族】含め銀系列は長生きの家系です。
30近くは普通に生きるし、大概が老衰って感じ。
なので…基本見送る側なんスよねぇ…。