さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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見るからにヤバい方と見てくれは普通な方。



どっちがヤバい?

ホワイトインセイン、というウマがいる。

神出鬼没の現代のサンジェルマン、このウマが踏み込んだ建物はことごとく倒壊する、なんてまことしやかな噂がホワイトインセインそのものを知らぬのに独り歩き的に流布し、また、そのウマを害そうとした者はみな死ぬとまで。

…そんなホワイトインセインの傍にある日、連れ添うように影があった。

どこにでもいそうなそのウマは、顔立ちこそ凡なものの、その芦毛の髪は思わず感嘆するほど見事で。

だが。

 

「凡。おい凡」

「……」

「ノーマル!!」

「…なぁに、いーちゃん」

 

流布する噂の通り、面倒事に巻き込まれ。

その過程でホワイトインセインが標的にされた時。

傍にいた凡なウマがどこの部屋から持ってきたのか、おもむろに火かき棒を取り出して下手人を滅多打ちにし始めた。

抵抗しようが、赦しを乞われようが、いっそ哀れな程に叩ける場所を縦横無尽に変えて滅多打ちにし続けた。

 

「ノーマル、ノーマルってば」

「なに?」

「ソイツ死んじゃうって!!」

「え? あ、ほんとだ」

 

ホワイトインセインは凡なウマがようやく手を止めたことに安堵し、下手人の生死を問うた。

もう死に体だし、襲ってきたということは犯人か、それに近しい何かだろうことは誰の目にも明らかだったが、それにしては暴の力が過激過ぎた。

しかし凡なウマは首をかしげてまた火かき棒で叩こうとするのでホワイトインセインは必死に羽交い締めし。

 

「ぉ、俺よりもお前の方がイカれてる…」

「ひどいなぁ、いーちゃん」

「いや、いくら俺でも死に体になるまでやらねぇよ。やっても骨折れたとかぐらいで止める。そこら辺までやったら痛みで大概の奴はもう何もできないからな」

「僕もやらないよ?」

「いや、そのやらないは殺す方のやらないだろ……」

 

ホワイトインセインが見るからにヤバい方だとすれば、凡の方のウマはよく見るとヤバい方だ。

ホワイトインセインなら謝れば許してくれるところを、凡のウマは謝っても許してくれない。

「君が泣くまで殴るのをやめない」どころか、もはや「君が泣いても殴るのをやめない」である。

 

「ノーマル、お前……」

「?」

「いや、もういいや。とりあえずソイツは死んでないよな?」

「うん」

「……ならいい」

 

ホワイトインセインの心配をよそに凡なウマは気絶した下手人を火かき棒でつついて生死確認をしていたが、やがて納得したのか頷いた。

そしてそのまま下手人の襟首をむんずと掴むと引きずりながら歩き出す。

 

「おい、どこに」

「『名探偵みなを集めてさてと言い』ってヤツだよ」

「は、」

「さ、行こう。ね、」

 

───名探偵サン(いーちゃん)





ふたり:
ホワイトインセイン&ホワイトノーマル。
見るからにヤバい方&よく見るとヤバい方。
たぶんノーマルは真顔で暴力振るってくるタイプだし、それを必死に止めるインセインはよくいる。
なので周りの印象とは逆に常識人なのはインセインの方なんだよね…。
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