ほんの少し、自分でも。
身体中、綺麗なんていえるところは何処にもない。
幼い頃から殴ったり殴られたりは当たり前で、致命傷は避けたけれど傷跡は残ったなんてしょっちゅう。
顔にだってデカい傷跡があるし、指も折れた回数が多すぎてどこか歪。
足こそ一度もやらかしたことはないものの満遍なく傷跡がある。
「…また、裸足で走ったか?」
「…エヘ、」
「お前なぁ、」
少々年下の友人に叱られる。
個人で蹄鉄屋をしている友人は何故だかぼくの足を気に入ったようで、本来は競走用の方が専門だというのに日常用の蹄鉄をせかせかと作ってくれる。
「蹄鉄が合わなくなってるじゃねぇか。つったく」
「あ、……うん、」
「足は大事だぞ?お前の足は綺麗なんだから」
「……わかってるよ」
蹄鉄屋の友人はぼくを叱りつけると、ぼくの足の具合を確かめるように触る。
その触り方がなんだか丁寧すぎてぼくは思わず友人から距離を取った。
「何だよ、別に変な意味で触ってるわけじゃねぇぞ?」
「わ、かってるけど、さ」
「お前、本当に綺麗な足してんだから」
「……そうかな」
「そうだよ。俺が保証する」
見下ろしただけで傷跡が分かる足を、この友人は綺麗だと言う。
いや、そもそもこんなデカデカと顔に傷跡がある人間にこうも親しげに、…果てには仕事だとわざわざ家にやって来て食事を同伴になる…なんて。
「…はやく帰ってくれよ」
「なんでだよ。食材は買ってきてやったろ?」
「…あの娘がさ、」
「?リリィちゃんが?」
「…キミと、…け、結婚したいとか言うから…」
「…。子どもの言うことだろ」
「そうだけどさぁ!」
ぼくが愛娘を溺愛していることを知っている友人はやれやれと息をつく。
「そんなんじゃ思春期になった時にパパ嫌いって言われるぞ」と友人はぼくを嗜める。
……思春期、か。
「…ず〜っと、ぼくのところにいればいいのに」
「あの娘ならどっかから婿捕まえてきそうだけどな」
「婿なんていらないよ」
「でも、あの娘がお前置いて出るわけねぇって」
「……」
ぼくはリリィのことが大好きだ。
小学生高学年と言えど、まだ幼いから難しい話はよくわかっていないだろうけど、それでもぼくを「パパ」と呼んでくれる娘は本当に可愛い。
……だから、もし彼女が結婚するならそれはぼくも認めた人だろうとは、分かっているけれど。
(……やっぱり寂しいものは寂しいよなぁ)
「ま、そんな思い詰めた顔するなよ。随分先の話だろ?」
「いずれ来る話なんだよ!!!!」
「ハハハ」
ゆる、と足を撫でられる。
それにふいっと足を振れば、薄らと笑まれた。
【先祖返り】:
ホワイトバック。
実は身体中傷跡塗れ。
なので素材はピカイチなんだけど傷跡でAPPガッツリ落としてるタイプ。
でもなぜだかお抱えの蹄鉄師さんに気に入られてしまって「はて?」状態。…はて?
蹄鉄師さん:
「ザンさん」と呼ばれている。
【先祖返り】のことを気に入っており、【先祖返り】の頼みなら多少難しい以来でも二つ返事で了承してくれるらしい。
蹄鉄は競走用のものを専門にしているが、最近は日常用のものも作り出した。
なんか独創的なのが多そう(こなみかん)。