さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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銀弾セン馬軸な話。



その事実を、誰も知らない

僕の甥や姪、それに姪孫はそれはそれは有名な競走バばかりだ。

 

「すごいなぁ」

 

僕は、子どもが出来なかったから。

その事実を、すごくすごく周りから惜しまれたけれど、幼い頃既に「この子は子どもを成せない」と診断されていた身だったので、特に何とも。

むしろ、こんな僕にこれほどまでに愛情を注いでくれた両親や祖父母や周りに頭が上がらなかった。

だからせめて、気のいいおいちゃんとして甥姪・姪孫の子たちに色々と還元しているのだけど(まぁ還元しないと資産が溜まるばかりだしね)。

 

「おじさま!」

「やぁ、ハイセイコくん。元気そうで」

 

かけられた声に振り返ると、そこには僕の一個下の全弟の子であるシロガネハイセイコくんが。

これがもうめちゃくちゃにすごい子で、僕と弟のふたりで「ウオオー!!」と言わんばかりにこの子の勝利に狂喜乱舞したのも一度や二度ではない。

いや、他の子でもその子の親である全弟と狂喜乱舞するのだけど。

 

「聞いてます?おじさま」

「あ、あぁ…え、えと、何だっけ?」

「もう!」

 

だがしかし。

実の父である全弟たちよりもこの子たち僕のこと慕ってない?って思うことが時々ある。

そりゃあ思春期だから実の親よりも伯父である僕には正直になれると言われればそうなのかもしれないけれど。

でも、それにしたって……ねぇ?

 

「おじさま」

「はいはい?」

「僕、来年クラシック三冠路線に挑みます」

「うん、知ってるよ」

「……っ!……そ、それで!」

「ん?」

 

シロガネハイセイコくんはぎゅっと僕の服の裾を握って真っ赤な顔で僕を見上げた。

あ、かわいいなこの子。

いやまぁ甥姪・姪孫のみんなは総じてかわいいのだけれども(伯父バカ)。

 

「だから、その……あの……」

「うん」

「おじさまに、見て欲しいんです!」

「え?」

「僕が、三冠を取るところを見て欲しいんですっ!!」

 

真っ赤な顔でそう叫んだシロガネハイセイコくん。

僕はと言えば、あまりのかわいらしさに思わず天を仰いだ。

あのねぇ!かわいいんだよこの子!! 全弟もかわいいけどさぁ!!!(兄バカ)

もうね、こんなかわいい甥姪・姪孫たちに慕われて僕幸せ者だよォ?

今にも泣きそう…。

……また、弟に「甥、姪ちゃんたちに食べさせてやって」って高級な肉とか送るか。

 

 

「残念ですが…この子は、子どもを成せないでしょう」

 

()()()()()と、希望を抱いていた。

あの頃、母である自分の知らぬ場所で()()()()()()()()()我が子。

それまで、どれだけ気性が荒くとも、そのようなことをされた親族は見たことがなかったのに。

 

「なんで…!」

 

堪らず泣いてしまう自分を他所に、当の本人は「ありがとうございます、せんせい」なんて。

 





僕:
シルバーバレット。生存√。
生産牧場にてセン馬になっている。
「こんなクソチビ馬、たとえ走ってもええ馬出すわけないやろ」みたいな。
けど当の本馬はえげつない戦績残すんだよね…。
なお、本来僕の産駒になるはずだった子たちは僕全弟のみなさんの産駒として分配されている模様(そしてもちろん僕全妹たちも繁殖◎)。
そのため「ついてたらなぁ…」ってずっと言われ続けるんだ。
これは多大なる損失ですね!(ニッコリ)
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