さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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仕方ないね(約束されし〜感)。


人気者だから

『サインいいですか』

『握手いいですか?』

「はい、どうぞどうぞ」

 

先輩-シルバアウトレイジはその見た目やら言動やらに反して、ファンサービスに余念がないウマだった。

流石の僕でもよくやるな、と内心思ってしまうほどに懇切丁寧で、ひとりひとりに笑顔で応じている。

 

「サインはひとり一枚まででお願いしますね」

「握手は順番に! 押さないで!」

 

この対応が人気に拍車をかけていることは、わざわざ言うまでもないだろう。

 

「親父から『ファンは大切にしなさい』って口酸っぱく言われてたからヨ」

「あぁ、」

「で、丁寧に接していれば接している分だけ問題が起こる可能性も減る。…ま、それでもアンチってヤツは少なからずいるもんだが」

「…」

 

でも、その対応の良さは処世術であり、身を守る術でもあって。

 

「好かれていれば好かれているほど、有名であれば有名であるほど、…なんかあった時に情報の周りが早いからな」

「そういう、ものですか?」

「そういうもんらしいぜ?ほら、今はSNSっていう大層で便利なのが普及してっけど、昔は人伝(ひとづて)を頼るしかねぇワケだし」

 

ウチの家系、人攫いに遭いやすいんだと。

そう呟く姿はどこか他人事だ。

 

「んで俺の親父も結構有名人だろ?で、あの顔の幼い頃って言ったら可愛いのは自明の理。つーことでよく攫われてた。んで、そういう時って大体が一族総出の大捕物に繫がってる」

「……プレアーさんは、大丈夫だったんですか?」

「逃げ足は物心着いた時から鍛えられるんだ。だから『人攫いのところから逃げるのは得意』って武勇伝をよく語ってくれたよ」

「すごいですね……」

「あぁ、俺の自慢の親父だ」

 

そう語る表情はとても誇らしげだけど、…どう考えたって誇るものじゃない。

 

「……もし、あの、先輩。ご家族が攫われたとして。……先輩はどうするんですか?」

「そりゃもちろん助けに行くさ」

「どうやって?相手は人攫いですよ?」

「親父は『逃げ足』って教えてくれたけどよ、別に俺だって無策で突っ込むワケじゃねぇぜ?ちゃんとピッキングはできるし、それに……」

 

彼はそこで一度言葉を区切ってから、にやりと笑った。

 

「……ま、俺の場合はいざとなれば」

「ちゃんと然るべきところに任せましょうね」

「えー」

 

 

言ってないけど。

 

(そういや昔…)

 

アイツには言わなかったけど、俺もそういうことあったな〜と思い返す。

でもそん時は持ってた色々なもので目潰ししたりしては、なんとか逃げ延びた。

親父も『逃げる時は相手と自分の実力をよく見極めろ』って言ってたし。

……まぁ、相手の力量を測れないヤツは長生きできないってことなんだろうが。

 

(ま、それは生き物全般そうだけどな)

 





【銀色の激情】:
シルバアウトレイジ。
一族が一族なので来歴がまぁ危ねぇし、幼い頃はぷりちーフェイスしてる。
また幸運EXとか何だりするので危険な目にあっても危機感が薄い。
なので来歴云々が一族以外の周りに顕になると…?(胃がキリキリ)
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